訳あり車両(¥ASK)
車検がもうすぐ切れるので、車を買い換えるために友人の経営する中古車屋を訪ねた。
「いらっしゃいませ〜」
恰幅の良い若いお兄さんが対応してくれた。
「社長も○○さんとお話ししたがってたんですが、どうしても社長自ら出向かなきゃいけない用事ができまして、残念がっていました。」
友人に会えないのはすこし残念だったが、お兄さんは良い人で、車について詳しくない自分に分かりやすく説明をしてくれた。
「このお店で一番安い車と高い車を教えてよ。」
なんとなく欲しい車の目星もついたので、雑談がてらお兄さんに聞いてみた。
お兄さんは、店の奥から分厚いファイルを持ってきてくれた。
「一番高いのがこちらですね。」
お兄さんが広げてくれたページには、有名な外車メーカーの車が載っていた。聞けば、世界に数台しかない車で、新品同様で手に入れたらしい。家が建つくらいの額だ。
「一番安いのはこれですね。絶対に僕はオススメしませんが。」
次に広げてくれたページには、某メーカーの真っ白なファミリーカーが写っていた。走行距離も多くなく、年式も古くない。安い車には見えない。値段は書いてない。考慮欄には訳あり車両(¥ASK)と書いてある。
「訳あり?事故車両とか?いくらなの?」
「事故は一回も起こしてないし、修復歴もありません。どうしても欲しい方に大体5万円くらいでお売りしますが、絶対に我々はオススメしません。」
「5万!?なんでそんなに安いの!?」
お兄さんは苦笑いで答える。
「乗ると死にます。」
「え?」
「新車でこの車を購入されたオーナーさんを含めて8人。全員浴室で首を吊って亡くなりました。」
T県