~ごめんで住む世界2~
「申し遅れました。私ルビーと申します。」
「俺は伊織だ。よろしくな。」
「イオリ様ですか、珍しい名前ですね。」
ルビーは考え込む仕草をしている。
俺はルビーおすすめのレストランのオムライスを食べていた。
とりあえずお腹がすきました!というルビーに引きずられるようにつれてこられたが、なかなか上手い。もう少し滞在するならまた食べにこよう。
「私以外に黒髪の人はこのあたりにいないからうれしいです!なんでも聞いてくださいね!」
そういってルビーはガッツポーズをする。
確かに俺とルビー以外で黒髪の人はいない。そこら辺の設定はいじっていないが、そういうものなんだろうか。交通機関が発達しなかったせいで黒髪の遺伝子を持っているやつとの交配がなかったと考えるのが妥当か?
改めてルビーを観察してみる。腰まである黒い髪をしており前髪をぱっつんにしている。顔はおっとりしているような印象を受け、服装は中世の絵画などで見る村娘という感じだ。特徴的なのは瞳が赤いこと。名前通りルビーのような色をしている。吸い込まれそうな色だ。
「…私の顔に何かついてますか?」
ルビーが不思議に思い問いかける。
「瞳の色が綺麗だと思って」
隠す意味もないので素直に感想を述べる。
「…ありがとうございます。私の唯一自慢できることなんです。」
ルビーはうれしそうに、しかし少しさびしそうに答える。
おや、とは思ったが何かあるのか聞く前に
「さ!ご飯を食べたなら観光しましょう!」
という声に後押しされ、聞くタイミングを逃してしまった。
「うーんやっぱり観光するなら市役所で調べるかな…、それとも美術展かな…」
ルビーが考えながら歩いているときに俺はあたりの人の会話を聞いていた。
「痛いなあ気をつけろよ」「ごめんごめん」「まあいいけど」
「それ私の財布だよー」「ごめんねー、頂戴!」「わかったー」
「お金ないのに注文したの?」「今回はみのがしてくださーい」「今回だけだよ…」
…怒りの感情をなくしたせいかわからないが、無法地帯になってないか…?聞こえてきた会話だけでもやったもんがちな感じが伝わるな。
「ルビー、この街には悪いことを取り締まる人ややっちゃいけないことをまとめたものなんかはないのか?」
「…警察と法律のことですかね?あるとは思うんですが…。この街の住人は何があってもたいてい赦しちゃうので、どっちも見たことがないですね。」
…なるほど、法はあるけど無法地帯な。
俺は自分で作った世界に一抹の不安を覚えながらも観光を楽しんだ。