~ごめんで住む世界1~
「さーて、どんな世界を作ろうかな。」
俺は机に脚をかけながら妄想を働かせていた。
自分の死んだ後の元の世界を見てしまったらなんだか吹っ切れてしまった。
なら折角もらった力を使って、面白い世界を作ってやろうと思ったのだ。
「跡取りとして育てられている間何の娯楽もしてなかったしなぁ。
折角だから好き勝手遊べる世界が作りたいなぁ」
昔の俺は本当に何もできなかったなぁ。友達と遊ぶのも禁止、運動も怪我したら危ないから最低限しか許されず、ゲームなんてもってのほか。初めてパソコンを買った時も疑われたなぁ。あのころには娯楽に興味なかったけど。
…小学生くらいの頃は勉強が出来なくて毎日叱られていたな。死にもの狂いで勉強して学年1位とれるようになったけども。
「…誰にも怒られない世界を作ろう。」
怒りという感情がない世界なら少なくとも諍いは起こらないから平和になる。戦争も起こらないから世界が滅ぶこともなくなるんじゃないか?
俺はすぐさま全生物の「感情」パラメーターをいじって、怒りという感情を世界からなくした。
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「どれどれ」
俺は自分で作った世界の探検に来ていた。前回は姿が見えない設定だったが今回は見えるようになっているはずだ。折角性格を変えたなら直接話してみたいもんな。
「ここ等辺を首都に設定したが…」
…何もない。いや、何もないわけでは無いがログハウスみたいなのしか無い。元の世界と同じ年代にしたから交通機関くらい発達しているかと思っていたが馬車しかない。
「うーん?」
まだ二回しか使っていないのにもう世界編集システムが壊れたのか?後で老人に見てもらわないとなぁ。などと考えていると
「あのー…、どうかされましたか?」
と若い女性に声をかけられた。
「少し考えごとをしていただけだ。」
偉ぶって答える。この癖は抜けない。
「君こそなんだ、突然声をかけてきて。」
「ああ、すみません。私の家の前でずっと立ってらっしゃったので何か御用かと思いまして。」
「用は特にない。ただ周りを見ていただけだ。」
女性は少しきょとんとした顔をした後笑った。
「おかしな方ですね」
いつもの俺ならこの発言に対して非難していただろうが、なぜだかそういう気にならない。
「もしかして地方からやって来られたんですかね?よろしければ観光案内をしましょうか?」
俺は女性の提案にのることにした。