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~神様始めます~

 

 いつも通り目覚ましが鳴り響く。

 いつも通り乱暴に叩いて止める。

 いつも通り背伸びをした後にあたりを見渡す。


 必要最低限の物しかないワンルームだ。

 財閥の跡取りであっても庶民の金銭感覚を学ぶようにと一人暮らしをさせられて以来ものを買い足すこともめったになかったため、パソコン以外の娯楽はない。

 俺にはそれ以外必要とは思えなかった。


「さっきのは夢だったのか…?」


 先ほど刺されたはずの腹部を確認しても、何もない。


「…最近仕事のしすぎで疲れているのかもな。」


 そう結論付ける。朝はもたもたしている時間はないのだ。


 急いで顔を洗いスーツに袖を通す。

 そしていつも通り会社に出勤しようとし、玄関を開けたところで思考が停止した。


 そこにマンションから見える光景はなく、ただ真っ白な空間広がっていた。

 そして不思議なことに、多数のディスプレイが空中に浮遊していた。


「おお、やっと目覚めたか。」


 しわがれた声が耳に届く。

 声の主は数メートル先でパソコンをいじっていた。


「いつまでたっても出てこないから中で死んでいるかと思ったわい。

 ま、もう死んでるんだがの。」


 老人は自分の言った言葉が面白かったのか、ククッと笑っていた。


「何を言ってるんだ、俺は生きてるだろう。

 それよりも、ここはどこだ、答えろ。」


「ここは天界、神の住まう世界じゃ。

 お前は久々の新人神じゃよ。」


 伊織は理解が出来ず「は?」と声を上げた。

 この老人は気がふれているとしか思えなかったが、果てしなく続く白い空間はとても現実世界の物とは思えなかった。


「まあ、説明してやるから聞け。」


 そういうと老人は語りだした。


 -----------------------------------------------------------------------------


 かつて神は7日間で世界を作った。

 人間は6日目に作られた。

 これは人間の間でも有名な話じゃろう?

 その神とはワシのことじゃ。


 作ったはいいが問題が起きてのう…。

 ワシが作った世界は何千年か経つと人間の手によってほとんど崩壊していたんじゃ。

 一生懸命作ったのにショックじゃったよ…



 ワシは原因の究明と解決がしたかったが、人間の思考レベル低すぎて分からなかった。

 人間の思考がわかるのは人間しかいない、そう思ったワシは何千年に一回人間を無作為に選んで神にすることにしたのじゃ。


 この空間で人間がなぜ世界を滅ぼすのか原因を探す、それがお前の役目じゃ。


 -----------------------------------------------------------------------------


「はぁ」



 俺の口からは何とも言えない言葉が出た。

 正直信じられない、理解が追い付かないという気持ちだ。



「…その話を信じるとすると、俺は神になってるのか?」


「そうじゃ、一度死んで神になったのじゃ。」


 一度死んだ、最初は信じられなかったが自分の腹部から出ていた血の量、

 あれが夢じゃなかったら死んでいただろう。


「…俺が殺されたのは俺が原因っていうわけでは無くて、神のいたずら?」


「いや、それはおぬしが原因じゃろうな。本来は寿命が来てからここに呼ばれるようになっているのじ ゃ。

 ほとんどの者が年寄りの姿で来るぞい。」



 老人は「おぬしよっぽど恨まれておったんじゃのう…」と付け足した。


「俺の家柄に嫉妬する者は少なくないからな。」


 俺にとっては当たり前のことだ


「俺は神代財閥の跡継ぎなんだ。本来なら比べることもおこがましいような俺に対して喧嘩を売るとは、犯人はさぞ頭が悪かったのだろう」


 そんなバカのせいで死ぬなんて認められないな、と憎まれ口をたたく。

 老人は「それだけかのう?」と小さくつぶやいたが伊織の耳には届かなかった。


「それで?お前は俺に何をして欲しいんだ?

 それが終わった後に俺を生き返らせるという条件つきなら受けてもいいぞ。」


「おや、信じるんじゃな?」


「半信半疑だが、これが夢だろうと現実だろうと早く終わらせて帰りたいからな。」


 やるべきことがたくさんあるんだよ、とつぶやく。



「いいじゃろう、すべて終われば生き返らせてやる。

 先ほども言った通りなぜ人間が世界を崩壊させるのか調べてくれ。

 おぬしの実験用の世界を作ってやろう、一つしかないが時間を動かしたり生物のスペックを変えることが出来る。」


 ただし、と老人は続ける。


「絶対に人間は生存させていてくれ。性格を少し変えるくらいならいいが原型は残して欲しいのじゃ。」



 なぜこの老人がそこまで人間にこだわるかはわからなかったが、伊織は条件をのんだ。

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