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真白のこの後を何とかしないとね






「お、お前……どうして……!?」




街に戻って安全な場所となるとここかなーと思い、雷の鬼人亭の中に入ると、さっき真白を見捨てたうちの一人が驚愕している。



僕はそれを無視して受付に向かう。




「依頼完了しました……報酬は既に貰ってます」


「はいよ……しっかし、何かあったのか?」


「んー……それでちょいと頼みごとがあるんですけど」




受付にいる雷斗さんに依頼完了の報告をしながら、繋いでいる手が震えているのに気づく。

まあ、十中八九さっきの奴らのせいだが……それは後に置こう。



まずは頼み事……それがどうなるか次第だね。




「この子をここで働かせたりとかできませんか?」


「うーん……お前さん、ギフトは何だ?」


「え、えっと……『神官』です」




僕がそう頼むと、雷斗さんは視線を真白に移してそう聞く。

真白がそう答えると同時に、雷斗さんは驚いていた。



……? 神官ってそんな驚くもんなのか?




「……サラ! ちょっとこっち来い!」


「は、はいっ! 何でしょうか?」




呼ばれて出てきたサラは左腕に包帯を巻いており、そこを痛そうに右手で押さえている。

あれは……骨折か?




「この子の左腕に回復魔法を掛けてみてくれ」


「は、はい……『ヒール』」




言われるがままに真白はサラの左腕に手を添え、魔法を唱える。

すると、左腕を光が包み込み……消える。




「す、凄い……もう治りました!」




どうやらさっきので完全に治ったのか、腕をブンブン振り回している。

凄いな……たったあれだけで骨折が治るのか……。




「……そうだな、寧ろこっちから専属でスカウトしたいくらいだ……」


「そ、そこまでです?」


「ああ……この世界では魔法の才があるのは半分くらいだと言っていい……そこからさらに回復魔法が使える奴となると大体十分の一かそれ以下だな」




雷斗さんの反応に大袈裟なんじゃないかと思っていたけど……そこまで聞くと正しい反応なんだなと思う。

何せ魔法は世界の半分しか使えず、その中から十分の一と言ったら……この街に数人いる程度か。




「加えてそれを仕事にしてる奴は大抵高く取りやがる……さっきので1000Gだぜ?」


「うわぁ……骨折を治してもらうだけでそんな取られるんですか?」


「ああ……だから専属が欲しいんだよ……そうだな、治療一回で100Gなんてどうだ?」




雷斗さんが色々説明しながら真白をスカウトする。

100Gって気軽に言ったけど……それって一回で一万円って事だよね?



これは予想以上にいい待遇なのでは?




「えっ、そんなにいいんですか!?」


「一回1000Gと比べれば全然マシだぜ? 冒険者なんてやってりゃ怪我なんて当たり前だし、それが回復魔法を使えない奴だったら1000G払って治さなきゃいけねえんだ……ポーションと比べて確実に治せるのが良いんだが、流石に高すぎると手が出せねえだろ?」





真白は驚いているけど、それくらい受け取っても良いんじゃないかな?

それほどこの世界で回復魔法ってのは希少なんだ。




「お、おい! ちょっと待てよ!」


「ん? ……ああ、さっき真白を見捨てた人達だね! どうしたんだい?」


「ぐっ!?」




後ろから声が聞こえたので振り向くと、さっき真白を見捨てた奴らが怒っていた。

なので僕は周りに聞こえるような大きな声でそう言う。



……君達に怒る権利なんてないと思うけどね。




「普通に冒険者になるよりも安全で確実だと保証するぜ?」


「はっきり言ってしまうと戦闘向きではないからね……ここで傷を癒す方が確実だね」


「骨折も一瞬で治すくらいですから皆頼っちゃいますよ!」




雷斗さんがここで働くメリットを言い、僕は冒険者になるのはやめた方が良いと言い切り、サラはべた褒めする。

ここまで言えばどっちが良いなんて分かるだろう。




「お前! 王女様に裏切ったって言うぞ!?」


「その時は僕が何とかするよ……汚れ仕事は昔っから慣れてるからね」


「俺もいるし大丈夫だろ……別にお前ら全員で攻めてきたっていいんだぜ? その時には死を覚悟してもらうがな……!!」




見捨てた奴らの一人がそう脅すので、こっちも脅してやる。

ていうか雷斗さんの殺気がやばい。

じりじりと肌が焼かれるような感覚が体を襲う。

それを感じてか、そいつらは「ひぃっ」と声を上げて恐怖に染まった表情で尻もちを着く。



まあ、別に僕は大丈夫だけどね。

母さんで慣れてるし。




「見捨てたのはお前らだ……まあ自業自得ってやつだ」


「……くそっ!」




雷斗さんにそう言われ、そいつらはここを出ていく。

まあ、あっちから手放したんだからいいよね。



後は真白のこの後をどうにかしないと……仕事は決まったとして……後は家か。




「ああ、ここで働くなら部屋も使っていいぜ」


「い、いいんですか!?」


「ここのルールでな……こっちが認めた人なら住ませてもいい事にしてるんだ」




何とも便利なルールもあるんだね……もう解決しちゃったよ。

後は……稼ぎが出るまでのお金か。




「はい、真白」


「て、鉄貨!? う、受け取れませんよ!」


「大丈夫だよ、今日の薬草集めの半分だし」




と言うわけで今日の薬草集めで稼いだ分の半分である鉄貨を渡すと、慌てた様子で断られるけど無理矢理渡す。

いやぁ、袋の中には百枚もの薬草が入っていて、それを全部渡して鉄貨十枚を報酬としてもらったんだよね。



銅貨もあるし、鉄貨五枚渡しても僕の所持金は250G。

日本円にして25000円である。

これなら無駄な物を買わなければ普通に生きていけるよ。




「うぅ……本当にしてもらってばっかりで申し訳ないです……」


「んー……ああ、それなら分かる範囲でいいから日向と唯さんの状況を教えてほしいな」


「日向君たちですか……えっと、そこまで知らないんですけど勇者のギフトを持っている人に話しかけられていましたよ」




勇者のギフト……最初に女神の泉から出てきたイケメンか。

それは面倒だなぁ……確実に勇者パーティーに入れられてるだろうし……出来るならこっちに引き抜きたいんだよね。

でも、まだ動けないな……今面倒事を起こしたばっかりだし……。




「うん、ありがとう」


「少しでも役に立てたなら良かったです……」




まずはお礼を言っておこう。

勇者と関わっているっていうのは大きな情報だしね。




「それじゃあ、僕は帰りますね」


「はい、今日はありがとうございます!」


「それじゃあなー」


「また来てくださいね!」




三人に見送られながら、僕は外へ出た。




「……うーん」




しばらく歩いた後、未だに分からない事について考える。



どうしてサラは骨折していたんだろう?

わざと折ったとかじゃないだろうし……何かに巻き込まれたのか?

それとも自ら首を突っ込んだ?



そういえばあの時もスラム街にいたけど……関係あるのか?




「……考えても分からないか」




百聞は一見に如かず。

頭だけ働かせて考えたってそれは仮定の事。

いくら考えても答えは出てこない。



だからと言って無理矢理聞くわけにもいかないだろうし……




「……あっちから話されるのを待つしかないか」




今は本人にしか分からない事だな。

そう思いながら家に帰るためにスラム街に向かった。


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