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ただの依頼でも面倒事には巻き込まれる






「ああ、これを受けてくれたんだね! 僕達じゃ手に負えなくてね……よろしく頼むよ!」


「分かりましたー」




まずは害虫駆除の依頼で少し大きめの一軒家に来た。

青年からの説明を受けて、家の前に立つ。




「もう一度言うけど、本当に大丈夫なのかい?」


「ん? 何がです?」


「いや、どう見てもナイフしか持ってないし……30cmのゴキブリだよ?」




何回も心配されるけど、大丈夫なんだよね。

別にゴキブリとか駆除したことあるし、それが大きくなったところで問題は無い。




「それじゃあ行ってきますね」




ナイフを持ち、扉を開ける。

その瞬間に黒い物体が飛んでくるので頭を斬り飛ばし、黒い物体の背中に乗って周りを見る。



ふむ、まず玄関に三匹か……どうやら頭を斬り落としちまえば大丈夫みたいだな……。

こっちの世界より生命力が低くて助かるよ……こっちだと頭斬り落としても死なないし、その後死んでも死因は餓死だしね!



小さくて良かったね……じゃなきゃ薬で殺せないもん。



そう思いながら『身体能力強化』を発動させる。

すると体に力が漲り、体が軽くなる。




「なるほど……それじゃあ行きますか!」




地面を蹴って一直線に跳び、頭を斬り飛ばす。

着地して足でブレーキを掛け、もう一匹に向かって跳んでまた頭を斬り飛ばす。



そんなに強くはないな……強いて言うなら普通の人なら見た目だけで卒倒しそうだなってくらいだ。

でも残念ながら僕はゴキブリは良く見てきたからね……他の人の家に駆除しにね。

母さんは何でこんな事させんだろうなぁとは思っていたけど……確かに必要な事なのかもしれないね。




そう思いながら近づいてくるゴキブリの頭にナイフを投げ、刺し殺す。




「これだけなわけが……無いよなぁ」




さっきから台所の方からカサカサ聞こえるんだよなぁ。

これはちょっと面倒そうだ……まあ依頼だし報酬もあるから頑張ろうか。



そう思いながら落ちたナイフを拾い、台所に入る。





















「これで……20匹目!」




大量のゴキブリの死骸の山を築きながら、最後の一匹に止めを刺す。

はぁ……流石に多すぎだろ……何だってこんなにいるんだ……?




「別に汚いってわけじゃないし……ん?」




ふと台所のテーブルを見ると、何かが見えた。

近づくと、何か札みたいのが置かれている。



普通こんなの台所に置くか?

しかも何かよく分かんない文字書いてるし……これ原因じゃね?




依頼人に見せれば分かるかなーと思いながら外に出る。




「も、もう終わったのかい!?」


「はい、死骸などの処理までは出来てませんけど……」


「それは専門の人に頼むよ……本当に駆除してくれてありがとう! 三日前から外で寝るしかなくて……やっと家に入れるよ!」




出た途端依頼者である男が話しかけてくる。

どうやら死骸処理とかの専門があるらしいから、それはそっちに任せよう。



それはそうとこれを見せないとね。




「すみません、これに見覚えはありませんか?」


「これは……召喚の札? これがどうして……_」


「台所にあったんです……もしかしてこれから出てきてたんじゃないですか?」




札を見せると、男はそれが召喚の札という事は分かるが、見覚えはないらしい。

となるとこれは作為的なものとなる。




「まさか……あいつか!?」


「あいつ?」


「ああ、三日前に友人と一緒に来た人がいてね……確かにその翌日に出てきたんだ……原因まで調べてくれるなんて君は凄いな!」


「あーいえ、別にそこまで言われることでは……」



どうやら原因が分かったらしく、褒められてしまう。

う、うーん……別に僕は物を持ってきただけでそこから原因を突き止めたのはこの人であって……僕の成果ではないと思うんだよなぁ。




「これを受け取ってくれ! 原因まで調べてくれたお礼だよ」


「これって……銅貨2枚!? いやいやこんなに受け取れませんよ!?」


「もし原因が分からなかったらそれも他の人に頼もうと思ってたんだけどね……それはその時の報酬だったんだ……それを渡すって事はそれだけの働きをしたって事さ!」




報酬として銅貨を2枚渡され、僕は思わず断ろうとするけど……相手は返されるつもりは無いらしい。

いや、まあお金はあって問題ないんだろうけど……そこまでの働きをしちゃったのかな?

僕はゴキブリを駆除しただけなんだけど……普通に考えればあれを気持ち悪いと思わず殺せる人は中々いないか。




「……それなら受け取ります……ありがとうございます」


「いやぁ、僕の方こそお礼を言うべきだよ! やっと家に帰れるんだからさ!」




家に帰れるか……三日間ずっと外じゃあ大変だったんだろうなぁ。



その後色々話して、次の依頼に向かった。


















道具屋に行って来て、薬草を入れるための特殊な袋を貰って町の外にある森に向かう。

何でもこの袋は魔術が施されており、見た目は普通の袋だが中の空間が拡張されていて、十倍くらい多く入るらしい。

重さも十分の一ぐらいしか感じないらしい……なんとも便利である。



店主さんは貰い物だって言ってたけど……こんな高価そうなの誰があげたんだろうか?



まあ、そんな疑問はいつか解決すると思いながら薬草を集める。

結構あるんだね……これなら袋いっぱいになるまで行けそうだな。



ちなみに薬草一枚で傷薬……まあ所謂ポーションが三個作れるらしい。

それでポーションは一個で石貨一枚……まあ稼ぎはあるらしい。

けど受けてくれる人がいなかったみたいで、品薄で困っていたみたいだ。



まあ確かに一枚で石貨一枚だからなぁ……加えて森は危険である。

普通の人は採りに来れないだろうねぇ……魔物に会えば死しか待ってないし。




「ここまでで半分……もうちょっと奥に行ってみるか」




浅い所では満タンにはなってくれないので、一応警戒しながら奥に進んでみる。




「うんうん、やっぱり奥にあった……それも大量だ!」




十分くらい歩いていくと、大量に薬草が生えている場所を見つける。

これはラッキーだね……それじゃあ全部採って……ん?




何だ……音が聞こえる?

走ってる音だな……急いでいるみたいだけど……誰かいるのか?




「速く走れっ!」


「くそっ、何であんなでかいのがいるんだよ!?」


「知らないわよ!」


「小さいのしかいないって聞いてたのに……!」




四人が何かから逃げるように走ってくる。

良く見てみれば僕達と同じ年齢で……まさか昨日転移された人達か?



……ん? 四人?

待って……確か……







『あのー最後に一つ……パーティーって何人組なんですか?』


『ああ、基本的には五人だな……バランスよく組める最適な人数だ』






「……ああもう!」




同じ説明をされたなら五人組な筈だ……また面倒事か!

そう思いながら奥に向かって走る。





「いやぁ! 来ないで!」





走り出してすぐに女性の悲鳴が聞こえ、やっぱりかと舌打ちする。

その後すぐに緑の小柄な人型――ゴブリンに銀髪の女の子が囲まれているのが見えた。



『身体能力強化』を発動させて地面を蹴って跳び、今まさに女の子を襲おうとしているゴブリンの頭を斬り飛ばす。

着地すると同時に女の子を抱え、後ろに跳んで距離を取る。




「大丈夫? 怪我は……無いけど服が破かれてるな……」


「はぁっ……はぁっ……えっ?」


「まずはこれを着てて……肌は隠せるでしょ……服は後で何とかするから」




怪我は無いかなと女の子を見ると、怪我は無いけど服が破かれてて……まあ、その、見えちゃってるので僕の学ランを羽織らせる。

いやぁ、高校生にしては大きかったね……Dかな?



少しラッキーだと思いながらナイフを構え、襲い掛かってくるゴブリンの武器を弾いて心臓にナイフを突き刺す。

ナイフを抜き、さらに襲ってくるゴブリンの頭を斬り飛ばす。

そのゴブリンの武器を奪い、遠くでこっちを見ていたゴブリンの頭に向かって投げ、斬り飛ばす。



流石にそこまでやれば相手も後退り始める。

……いや、奥に二倍くらいの巨体が見える。

あれを見てあいつらは逃げたのか?




「あれを放っておいたら薬草も採れないな……仕方ない、狩るか」




どれだけ大きかろうと頭を斬れば殺せる……が、何か邪魔な鉄の兜があるな……何で全部隠してんだよ……?

まずはあれを取らなきゃ話にならないな……。



そう思いながら地面を蹴って跳び、巨体なゴブリンの鉄兜を下から蹴り飛ばす。

外れたのを確認して、横から振るわれる腕を裏拳で受け止める。

相殺すると同時にパァンッ! と何かが弾けるような音がして、ゴブリンの叫び声が聞こえる。

どうやら僕の力の方が強かったらしく、苦しんでいる。



その隙を逃さず、着地してからもう一回跳び、頭にナイフを突き刺す。

それだけだとまだ動きそうだったので、ナイフを抜いて頭を斬り飛ばす。



流石にそれで絶命し、ズドンッ、と音と共に倒れる。

それを見ていたゴブリンは全員逃げだしていく。




「ふぅ……終わったか」




着地しながら周りを見て、敵がいないかを確認する。

いないと確信してから女の子に近づく。




「えっと……立てる?」


「は、はい……その、ありがとう……」


「うん、どういたしまして」




僕が手を差し伸べると、彼女はお礼を言いながら掴んでくれる。

うんうん、お礼を言ってくれる子は良い子だ。

何でこんな子を見捨てたんやら……本当に解せぬ。



薬草は半分以上は集まっている……もっと集めたいけど、この子を安全な所に預けないといけないし、ここまでにしようか。




「あ、あの……私、七海真白と言います!」


「真白ちゃんね……僕は清水理樹、すぐに追い出されちゃった人だって言えば分かるかな?」


「あっ……はい……でも、私を助けてくれた良い人です」



自己紹介をし、自虐すると笑顔でそう言ってくれる。

まさかそんな風に言われるなんて……真白ちゃんは優しいんだな。




「……まずは街に戻ろうか」


「は、はいっ!」




僕達は街に向かって歩き出す。



……手を掴んだままなのは迷いたくないからかな?


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