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僕の母さんが最強だったらしい






「おらよっ」


「おっと……もう、後ろから押すときはちゃんと言ってよ? 怪我するじゃん」


「何で全然動揺もしてねえんだよこいつ……」




外に出て段差がある所で兵士に押されそうになったので、先に前に跳んで着地しながら文句を言う。

いやぁ、こんな事で動揺してたらこの先何もやっていけないって。



そんなわけで追い出されたわけだけど……さて、何をしようかな?




「ねえねえ、お勧めな所ってある? これから暇になっちゃうからさ」


「はっ? お前馬鹿なのか? これからお前は――っ!?」



僕の態度に苛ついたのか、何かを言おうとしたんだろうけどその前に隠し持っていたナイフを首に当ててやる。

10mは離れてて、武器が槍だったから油断していたんだろうけど……それくらいなら一瞬で埋めれるんだよね。




「ナイフを隠していたのには気づいた? 僕の動きは見えた? この殺気に気づけた?」


「な、何なんだお前はっ!?」


「……気づけなかったんだね……なるほど、この世界の人達の身体能力はそこまでじゃなく、女神の加護に頼ってるだけか」




さっきのでも軽くやったつもりなんだけど……王城の兵士でこれかぁ。

怠けてんじゃない? これじゃあいつ死んでもおかしくないよ。



母さんが言ってた「物に頼ってはいけません」っていうのはこういう事なのね。




「さて、僕も別に殺したいってわけじゃないからさ……そのまま何もしないでよ?」


「き、貴様は……!?」


「それとも……死にたい?」




兵士が何かしようとしたので殺気を放つと、「ひっ!?」とか情けない声を出して尻もちを着く。

うーん……これが王城の守りとか大丈夫か?



まあいいや、これで何かすることは無いでしょ。




「じゃあねー」




軽く手を振ってから、僕は街の中へ入っていく。






















街の中を歩きながら、そういやお金ないなと気づく。

うーん……定番は冒険者になることだが……あまり大きな依頼はNG。

低ランクなら何かのお手伝い的なのがあるかなと思っていると……




「ふぎゅっ」


「わっと……あ、すみません」




誰かがぶつかって尻もちを着いてしまったので、僕は手を差し伸べながら謝る。

どうやら僕より幼い女の子のようだね……ん?



何で僕敬語使ってるんだ?

年下の子なら別に敬語使わなくてもいいよな?




「すまない、少し考え事をな……むっ?」


「な、何?」


「その顔、この懐かしい感じ……なるほどぉ」




綺麗な青髪に可愛らしい顔からはまず出てこないであろう喋り方で僕の顔をじっと見、ニヤリと笑う。

な、なんだこれ……ていうか懐かしい感じ?




「君、『シミズアイリ』の子だね?」


「っ!?」


「その反応、当たりか」




悪戯っぽく笑う少女の口から母さんの名前が出て、僕は驚いてしまう。

こいつ……何で母さんの名前を……?



発音はおかしかったけど。




「まだニホン語? とやらに慣れてないからそこは許してくれ……しかし、本当に出会えるとはな……」


「あ、あのー……母さんとはどういう関係で? て言うよりどうして知ってるんですか?」


「それに関してはゆっくり休める所で話すとしよう……ついて来てくれ」




そもそも日本語という単語が出てくる時点で怪しいんだけど……これついて行くしかないよなぁ……母さんの事知ってるみたいだし。



そう思いながら少女? の後をついて行く。



















「ここだ、入ってくれ」




ついて行って10分ぐらいすると、普通の家に着く。

どうやらここが少女の家みたいで、入れと言われたので扉を開ける。




「……外の見た目と中の広さが違うんですが」


「空間を弄っているだけだ……あまりにも狭くてな、二倍にしたら丁度良かったんだ……ああ、そこに腰を掛けてくれ……今お茶を持ってくる」




ただの家だと思ったら魔術的な要素が入ってた……流石異世界。

そう思いながらソファに座って……おおう、フカフカじゃないか。




「お茶を持ってきたぞ……ああ、そのソファは君の母親からのアイデアさ、いいだろう?」


「ああ……あんまり聞きたくなかったんですけど……母さんはこの世界に召喚されたんですね?」


「ふむ、そうだね……君の母親とは親友でね……ああ、私は賢者だよ」




お茶を持ってきた少女が向かいにあるソファに座ったところで母さんのことを聞くと、答えと一緒についでみたいな感じでとんでもない言葉が飛び出て、お茶に伸ばしてた手が止まる。



賢者? この人やばいくらい強いの?




「ん? ああ……賢者と言うのは全属性の魔法を扱え、また知識が膨大な人の事をそう言うらしい……私のは親から受け継がれたギフトでな、『ブラッドギフト』と言われている」


「……『ブラッドギフト』? そんなのがあるんですか?」


「ああ……君にもあるはずだよ? 何せアイリは『勇者』のギフトを受けた人より強かったからね」




なるほど……つまり賢者は凄いって事だね(思考放棄)。

ていうか僕の母さんが勇者より強いとかどういう……いや、それはそれで納得できてしまうんだけど……。



しかし、ブラッドギフトとな?

そんなものはさっきは頭の中に浮かばなかったけど……?




「ふむ、おかしいな……確かにあるはずだが……もう一度ギフトを思い出してみてくれ、私の魔法で見てやろう」




少女に言われた通りに思い出してみて……いや、身体能力強化しかないな。

やっぱり無いんじゃないか?




「……あいつも用心深い奴だな……怪しい奴に悪用されないためか」


「えっ、何がですか?」


「私のようにギフトを見れる奴もいるから悪用されないように封印しているんだ……しかも私の血を垂らさなければ解除できないようになっている……愛されてるんだな」




そう言いながら少女は指を取り出したナイフで少し切り、僕に血を垂らす。

すると、何かが頭の中に浮かんで……!?




「……何だこれ……」


「やっぱり……これが君の本当のギフトだ」




二つのギフトが浮かんでいる。



一つ目は剣神(刀)。

どうやら刀を扱う事を極めた証らしい。

確かに母さんから剣術を教えられたけど……そう言う事だったのか。



二つ目は魔法無効。

これは単純明快で魔法が効かなくなる。

ファンタジーな世界でこれは流石にぶっ壊れなんじゃないかなぁ……何だこれ。




「ふむ、そこまで驚いていないようだな……強いて言うなら面倒事が起きるなぁって感じか?」


「よく分かりますね……まあ強くて損は無いですからね」


「そう言う所も似ているな……さて、そんな君にこれを渡そう」




まあ母さんの子だし仕方ないよねと理解できた所で、少女から鍵を渡される。

何だろうこれ……?




「アイリから預かっていたものだ……家の鍵でな、この地図に場所は書いてある」


「えっと、何から何までありがとうございます……ところで名前は?」


「おっと……私としたことが忘れてたよ……イリスだ、これからよろしくな」


「はい……そういえば僕の名前も言ってませんでしたね……理樹です」


「ふむ、良い名前だ……それではな」


「ええ、お邪魔しました」





イリスさんに家の鍵を渡され、お互いに名前を教える。

初対面なのに今まで何も気にすること無かったな……まあいいや。




僕はお礼を言い、この家を後にする。


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