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僕のギフトが何か弱いんだけど






「……こんな風になってるんだな」



中は白い空間。

そこには何も物は無く、限りなく白が続いていた。




「誰もいないのか……?」




女神さまとやらがいるのかなーと思ったら誰もいないので周りを見渡しながらそう呟く。

えぇ……誰もいなかったらここからどうやって出るの……?




「……そう、貴方が来たのですね」


「っ!? ……女神様、ですか?」


「さあ、ギフトを授けます……手を」




いきなり背後に気配を感じ、振り向くと白い何かを纏った女性がいた。

その女性は僕の質問に答えることなく、手を差し伸べてくる。

ちょっと軽く不快感を感じながらもその手に僕の手を重ねる。




ほんの少し暖かいのを感じ、女性は手を離す。




「ギフトは授けられました……貴方に幸多からんことを……」




その言葉を聞いた瞬間、僕は光に包まれた。




















「……あ、終わったのか」




目を開けると、日向と唯が僕の事を心配そうに見ていた。

むっ……何か周りが騒がしい。

誰かが周りに言いふらしてて皆が僕を見て……馬鹿にしてるように笑ってるな。




「理樹……」


「嘘……どうして……?」




二人も何か絶望してるし……何だろう?

もしかしてギフトか?

そう思い、ギフトを……あれ? どうやって見るんだ?



と思ってたら頭の中に『身体能力強化』と出てくる。

どうやら身体能力を強化できるだけらしい。





「……それだけかぁ」




まあ、僕らしいと言えば僕らしいな。

これぐらいが丁度いい。



何だけど……。




「……それだけですか?」




女性もとい王女さんの視線が痛い。

何かもうゴミを見てるような目じゃん。




「……らしいっすね」


「……彼を囲みなさい」




軽く返事をすると、苛立たせてしまったのか武器を持った兵士に囲まれる。

えぇ……酷くない?

もう人生終了?




「王城から出しなさい」


「はっ!」


「ちょ、ちょっと待てよ!」




あーやっぱ追い出されちゃうのかと思っていると、日向が大声で制止する。

不味いなこれ……何も起きなきゃいいけど。




「何ですか? 彼は使えませんので退場していただくだけです」


「勝手に呼び出しておいてそれはねえだろ!!」


「戦力にならない者に割く予算はありません」


「このっ……!!」




王女が冷たい口調でそう言うと、日向の怒りは高まってしまう。

拳を構え、一直線に突っ込もうとして――




「待てっ!」


「っ!?」




……僕の声で床にヒビを作りながら止まり、僕を見る。

その目はどうして? と訴えかけていた。




「……すみません、少し話したいんですけどいいですか?」


「何を言っているんです? 貴方は早急に――」


「別に『狂戦士』である日向が暴走してもいいと言うなら構いませんけど」


「「「……!?」」」




僕が前に出ると王女は邪魔するように立ち塞がるが、周りに聞こえるような声でそう言うと、皆がざわざわし始める。

『狂戦士』がどういうギフトかは皆聞いてるのか、日向から遠ざかる。




「貴方……! 私を脅しているのですか!?」


「脅してるかは受け取り方次第ですけど、確実に暴走しますよ? 僕は日向の親友らしいですし」


「……三分だけです……それ以上は退場してもらいます」


「ありがとさん、助かるよ」




真実を言ってるだけなのに脅してるとか言われて私は悲しい。



ふざけるのはここまでにして、僕は日向の前まで近づく。




「どうして……? どうして理樹が追い出されちゃうんだよ!?」


「弱いギフトを引いてしまったからだよ……だから仕方ないの」


「仕方なくない! 勝手に呼ばれてこんなのっ……理不尽じゃんかぁ……っ!」




日向の言葉に現実的に答えると、怒りながら泣かれてしまう。

まあ、日向の気持ちも分かるけどね……確かに理不尽だ。



でも、ここは我慢してくれないと迷惑かけちゃうから、納得させないといけないな。




「……はぁ、お前は本当に昔から泣き虫だなぁ……今は不良なくせしてさ」


「だってぇ……理樹が追い出されるのは嫌だもん……!」


「大丈夫だよ、もう絶対会えないわけじゃないでしょ?」



僕は日向の頭を撫でながらそう言うと、日向は僕の胸に顔を埋めて抱き着く。

周りの視線が何か痛いけど、今は無視しよう。



……本当に昔から泣き虫だよ、こいつは。

いつもは強がってて、でも僕の前では素直でいてくれた。

それが親友として嬉しかったし、ありがたいとも思った。




そう思いながら周りを見ると、唯さんと目が合う。

口には出してないものの、理不尽だと表情が訴えかけている。




「あー、唯さん?」


「理樹君……」


「……日向の事を頼めるかな?」




日向の二の舞を踏ませないように、僕から話しかける。

唯さん達の立場を悪くしたくないしね。



それに、日向の事を任せられると思うから。




「日向はさ、一直線に行っちゃうから何とか手綱を握って欲しいんだ」


「理樹君は……大丈夫なの……?」


「大丈夫だって、何とかなるさ」




唯さんに日向を任せると、何でか僕の心配をされた。

うーん……唯さんは優しいなぁ。



まあ、きっと何とかなるでしょ。

母さんも「人生は行き当たりばったりしかないわ」とか言ってたし大丈夫大丈夫。




「……時間です」


「ほいほい分かったよ……ほら、日向」


「うぅ……」




王女にそう言われたので日向に声を掛けると、思いのほか素直に離れてくれた。

……でも、親友の泣き顔を見るのは辛いな……笑ってくれた方がいいんだけど。




「……今度こそ追い出しなさい」


「「「はっ!」」」


「ちょいちょい、そんな武器向けなくてもちゃんと従うから!」




王女の指示で囲んでいる兵士が再び僕に武器を向ける。

別に向けなくても余計な事したくないから従うのにね。




そう思いながら兵士に誘導され、王城の外に出された。


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