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双頭竜転生

火竜の方が俺だ!そして兄だ!3〜べっこう飴編〜

作者: 鷹司

突然だが

弟と喧嘩してしまった どうしよう?


何気ない一言がきっかけだったんだ


川辺に寝そべり魚を眺める双頭の竜、その右側 火竜である俺はもう1つの頭である弟にふと話しかけた

「焼肉にも焼き魚にも飽きてきてしまった…」

「生で食べれば?」

「それができたら!食べてるわ!!」


…いや、弟は何も悪くない

むしろ自分では不器用過ぎてミンチになるので全く解体もしないで取れた獲物は全て弟に魚は3枚に 獣はブロックになるまでバラして貰わないといけない身のくせにそんな事を言うのは間違っている

だが口が寂しくて苛々してる時に言われて逆ギレしてしまったんだ

10何年溜まってた分が爆発したっていうか…まぁ全部言い訳だけどさ

でも苛々してた所にそう言われて は?なんなの?食えばいいとか…転生前は生臭さから焼いた血合いさえ口にできなかった俺にこの鋭敏な鼻を持つ火竜に生物を食えと?って頭にきたんだ

「わかった わかったから兄さん怒らないで」

「怒ってないし!……でも頭を冷やすからそっとしておいてくれ 話しかけるなよ!」

はい 俺の八つ当たりですね

それからもう会話がなくなってから3日が経っている

っは〜大人気ねぇ…別に成体じゃないけど大人気ない…

川の流れに頭を突っ込み頭を冷やし始めてからだいぶ経つ おろおろしながら俺を弟が見てるのが気まずくて首も出せない

あーもう 弟も話しかけるなって言われてショック受けた顔してたのに良い子だから話しかけれなくてちらちら見てくるだけだし

これは俺が謝らなきゃいけないってわかってはいるんだけど、八つ当たり以外の何物でもないのになんて言えばいいのよ?

ごめん?

悪かった?

あー悪いとは思ってるからごめんは言えるけど 主張は変わらないからそんな軽い謝り方で終わらせるのも嫌だ、絶対後々同じ事で爆発する

何を言おう どうしようと悩むけど頭悪いからあまりいい答えが出ない

普段は弟に話しかけてると弟の頭の良さにあやかれてか名案が浮かんだりするのにその弟に話しかけれないことで悩んでるとかつんでる

俺は頭悪いんだから人に頼りたいのに…

人に…頼る?


は?名案じゃね?

竜は竜だから生食当たり前丸かじり最高ー!って感じだけど、人間なら丸かじりしてないだろ

なら食の好みの違いについて人間に相談すれば良いんだ!

さえてるー


そうと決まれば川に用は無い

「よし 森の中の街道近くを張るか!行くぞ!」

「えっ、うん。」

勢いよく首をもたげると 何故か驚く弟に声をかけて駆け出す。

「人間ってどこらへんが一番通るかな?」

「逃げられないように人の道が狭くなってるところがいいんじゃないかな」

「よし行くぞ!」

「うん」

それならば谷を通る街道が一番良い、ここからすこし遠いので近道する為に翼を広げた






この時、私は死を覚悟した

国王陛下の誕生の宴に王女様をどうにか間に合わせようと魔の森を通ると決めた事が間違いだったのだ

隣国での歓待が長引き少し急いで帰ればまだ間に合うかと思って計画していれば、帰路の橋が大雨で流されたと報せが届き悠長なことも言っていられなくなってきた

50歳という節目の年に当たる今年の宴はそれは盛大に行われる、それに間に合わないなどいかに愛されている末の姫様とはいえお立場が悪くなりかねない

それならばと少し無理をして魔の森を通ることにした、ここは昔は使われていた街道だ 整備されていないが石畳がしっかり作られているので王女様の乗る馬車でも揺れは激しくなるものの何とか通れるだろう


そう判断しちょうど森の中央、橋を渡り谷に差し掛かった時影が落ちた

雨雲かと思い 空を見上げると太陽を背に四つの瞳が見下ろしていた

大きな竜だ

それも二色の双頭竜、ここが竜の縄張りの近くとなり人は避けるようになってから暫くたつとはいえ まさか伝説の双頭竜だなんて!

昔 竜を討伐しようとした偉大な王がいたというが、その竜の子を奇形の双頭だと棄て置いたら復讐に都を焼かれ一晩で全てを失ったという

そんな昔話で話される 双頭竜、力の象徴

もしあいつが私たちを戯れにだろうと襲おうと思ったら終わりだ

馬車の姫様は置いていけない こんな谷では反転する事も出来ない

下手に動けば刺激するのでは 恐怖で腕が震える

何分 いや何秒だったかもしれない見つめ合うのに飽きたと言わんばかりに赤い竜の口が開く

「盾を構えろ!」

口をついた言葉は無駄かもしれない防御の指示だった

蜂の巣を突いたような騒ぎだ 一言発した事で動くのを思い出したものは一気に動き出す

うまは暴れ 人は叫び倒れるものまで出てきた

竜が息を吸う 長い首の蠕動が見える 口が開かれた時皆死を感じた

「ガアァァァァァァァァァ!!!!」

竜が吼える

耳だけでなく体も心も奥の奥まで響くようなとてつもない咆哮だ

思わずうずくまると赤い竜は不思議そうに見下ろしてくる

誰一人として立ち上がれないそんな人や馬が心底おかしいと言わんばかりに覗き込んでくる

そんな時だった

『兄上は問おうとしている、死にたくなくば応えよ』

頭に意味が響く

異なる言語を理解するように青い竜が口を開くと聞こえた気がした

赤い竜が小さく唸る

『…人は仲違いしたものとよりを戻す時何をするか?』

誰も答えなかった 否、答えられなかった

かろうじて鼓膜は破れてないかもしれない、しかし間近で当てられた衝撃に体がついてこない

死にたくない 何でも良いから答えようと口は開くのに 音にならずに息が逃げる

青い竜の口から白い靄が溢れ出してきた

『答えぬ気か』

明らかに怒気を孕んだ意思がぶつけられる

そんな事ない、答えます

それさえ言えず皆地を這っていた時 戸が開く音がした

王女様が馬車の戸を開けていた

王族を守る為強化された馬車の中にまで咆哮の衝撃は届かなかったのだろう、その無事なお姿に安堵する

「わたしは美味しいものを食べて気分が落ち着いたら謝りたくなります」

王女様は思いつめた顔で竜を見つめ言葉を返す

その小さなお身体で倒れ伏し役に立てない家臣を守ってくださるように堂々といつも優しく儚げな姫様が挑むように立っておられた

竜の頭が話すように交互に鳴きまた青い竜が口を開く

『兄上は言う、人は料理なるものをするらしい 我らを満足させよ、さすれば森を出るまでの安全は約束しよう』

料理、料理を御所望とは高尚な竜もいたものだ

だが鳥で知らせて宿や貴族の館をとり野営などさせないようにしていたのが仇になった、昼食の終わってしまっている今料理や食材など無い

遠ざかったと思っていた死がまだ身近にあるのを感じ絶望から涙を流す

そんな私達を尻目に姫様は落ち着いて馬車に戻っていく

「そのお身体からすると足りないとは思いますが飴ならありました」

『あめ?』

青い竜は首を傾げ、赤い竜は鼻息荒く上下に揺れる

どこにしまっていたのか姫様は小箱から飴を差し出して見せる

『…兄上は気に入ったみたいだ食べさせろ』

「…っはい」

目の前に二つ赤い口が開かれる

生臭い息にほのかに甘い果実のような香りが混じる

姫様は飴をいくつか握るとそれぞれの舌先に乗せる

気丈に振る舞うものの姫様はまだ15になったばかり その手は震えていた

赤い竜は天を仰ぎ 青い竜は静かに目を細める

またぐるぐる唸り合うと首を絡めた

『兄上は答えに満足した』

青い竜の顔が再び近づくと馬車を大きく舐める

『これでこの森のものはお前達を襲わないだろう、もう行っていいぞ』

二つの首を重ねた一匹の竜は再び空に戻って行った

「何だったのかしら…」

呆然とした姫様の言葉に我に帰る

ようやく動かせるようになった足でお側に向かうと無事を喜ばれる

たしかにあれは何だったのか?不思議な竜だったがとにかく一刻も早くここから離れたい

皆の心は一つになり 馬を駆った


その後 飴の味を覚えてしまったのか街道にまで竜が現れるとも知らずこの時私は神に感謝していた









「おおおお!人間だ!人間がいるぞ!!」

「人間を見つけにきたんだから当たり前でしょ?」

いや、そう言うけどそういえば異世界の人間とはファーストコンタクトじゃん

これはテンション上がる、何年振りの人間だ?!第一声は何にしよう?

止まってもらえなかったら悲しいから道の正面に降りることにする

第一印象は大切だ!笑顔で!大きな声で元気よく!

「こんにちはぁぁ!!!!」

「…兄さん何してるの?」

不思議そうに弟が聞いてくる

「え?挨拶しただけだけど」

「…人間はみんな竜語がわからないみたいだけど」

「えっ?!」

ここまで来て言葉の壁にぶち当たるとは…上がったテンションが急降下する

「兄さん!ほら念話 念話があるよ、僕は使えるから聞きたいことがあれば聞いて」

マジか…念話とか繊細すぎて使えないから練習さぼってたのくやまれるー まぁできる弟のおかげで意思の疎通は取れるみたいだし良しとしておこう

「うん…質問があるから答えてって言って」

『兄さんの質問に、死にたくなければこたえろ』

「ちょっとまって どうして脅したの」

「え、人間は意思の疎通できる分ちょっと脅すか釣るかすれば動くって叔父さん言ってたから」

うん 俺の知らないうちに純粋な弟に吹き込んだ叔父さん後でしばく

とりあえず叔父さんへの制裁は後回しにすることにして聞きたいことを聞くことにした

「喧嘩した時どうやって仲直りするか聞いて」

『…人は喧嘩して仲直りする時どうする?』

言ってから思う これ喧嘩してる弟通して言うもんでも無かったな…お互い思ったのか少し微妙な顔をしながら律儀に弟は聞いてくれる

それにしても人間ってこんな動きないものだったっけな?みんな転んだのか鈍臭くジタバタしていて俺の質問どころじゃないみたいだ

「なんか忙しそうだし答えてもらえないみたいだし帰る?」

「は?人間ごときが兄さんの質問に答えないとかありえないでしょ」

『答えない気なの』

ムキになったのか弟が叩きつけるように念話を送る

さては弟この世界に携帯があれば返信しない限りメール何通も送るタイプか?イライラし過ぎて口から冷気溢れてるじゃん、とりあえずイライラは健康に悪いから後で小魚を取りに行こう思いながらまた弟が口を開くのを見ていると人間に動きがあった

真ん中に留っている馬車からなんだか小さくキラキラした女の子が降りて話しかけてきた

「美味しいものを食べて気分が落ち着いたら謝りたくなるってあの雌は言ってるよ」

「あー美味しいもの!美味しいもの良いね!あれだ人間は料理するでしょ?なんかないか聞いて」

『兄さんは人間のする料理が欲しいそうだ、満足させれば森を安全に出してやる』

「今度は交換条件になったの」

「だって兄さんなんか脅したら嫌そうだったじゃん、兄さんに嫌な思いはさせたくないから釣るしかなくない?」

この弟は…!可愛い!!うちの弟は世界一 いや世界を変えても一番可愛い!!なんなの恥ずかしそうに嫌な思いさせたくなかったとか?可愛いの上限突破?

俺が弟可愛さにのたうってるうちにキラキラ少女は馬車から何か取って来たみたいだ

『あめ?』

「飴?!マジ!食べる食べる 弟も一緒に食べよう!」

「え、この琥珀みたいなやつを?」

弟はあめと言う言葉に首を傾げていたが俺はまたテンションが上がって来た

今生初の甘味だぞ!べっこう飴!テンション上がらんでか!

『…兄さんは気に入ったみたい食べさせろ』

弟と並んで口を差し出すと舌の上に小さなかけらが乗るのを感じた

あ゛〜やっぱ甘味は幸せの味だろ

弟も気に入ったのか目を細めて笑ってる

今がキラキラ少女の言う謝りどきだろうか

「なぁ、きつく言い過ぎちゃってごめんね 触れられたくない話に一番返されたくない正論言われてカッとなってごめん」

「いいよ、それに僕は話しかけないでって言われたから話せなかっただけで怒ってないから」

「でも重ねてごめん俺はこんな飴や林檎やしっかり焼いた肉みたいな美味しくて嫌な臭いしないのしか食べたくないんだこれは曲げられない、こんなわがままばっかり言ってほんとごめん」

「うん、いいよ その代わりに僕は兄さんにその分いっぱいわがまま言ってあげるからお互い様ね」

「弟!」

ほんと弟がいい奴でよかった

嬉しくって擦り寄ると弟もふざけて擦り寄って来て二人で螺旋状に絡まってしまいおかしくて笑い合う

今のうちに話し合えてよかった、たぶん食の好みは変わらないしまたイライラするけど 弟はちゃんと話せばわかってくれることがわかって本当に良かった

「ほんと美味しいもの食べてイライラ落ち着いてから話せてよかった、怒ってる時ってなんでも腹立つもんな」

「そうだね、あのあめっ物も美味しかったし人間も役に立つんだね」

『兄さんは答えに満足したみたいだ』

弟が馬車を舐めてマーキングする

『これでこの森のやつはお前達を襲わないだろう、もう行っていいよ』

用は済んだしそろそろ帰ろう それにしても甘味は偉大だ

あんなにイライラ思い悩んでいた俺も さっきまでイライラしてた弟も落ち着いてる 小魚のカルシウム以上の効果じゃないだろうか?

そんな事を思いながら羽ばたき帰路につく

「…ねぇ兄さん 今日食べたの凄い甘かったね、人間ってあんなの食べてるの?」

「あれは主食じゃなくてお菓子って言って満腹感より満足感を満たす食べ物なんだ 飴だけじゃなくて人間の食べ物は色々あるんだぞ」

そう言うと弟は俺を尊敬したように見てくる

「さすが兄さん色々知ってるね!じゃあまた今度違うものを貰いに行こうよ」

「いいな!お前も人間の食べ物の魅力がわかったか!」


そう安請け合いした俺は数年後よく街道近くまで行くようになり ようやく覚えた念話でこの巨大な竜の体がどれだけ怖がられているか知り凹むことになるのだった

正直に言うといい兄さんの日を目指して書いていたら間に合いませんでした!

まぁツインヘッドドラゴンは同個体なだけで双子みたいなものです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 兄はなぜ喋らず、弟が喋ってるんだw と思ったらちゃんと別視点であったw 弟有能すぎる!
[良い点] 弟可愛い!笑 [一言] 定期的に見に来てます。
[良い点] 大好きな双頭竜のお話が更新されていてとても嬉しいです☆(≡^∇^≡) 半月ほど経っているけど(^_^;)また楽しみにしてます♪ [気になる点] 仲直りの仕方を自分を介して人間から聞くという…
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