8話
熱せられて真っ赤に染まる大地。
そして、その炎に照らされる真っ暗な空。
…ここは、地獄?
燃やされて死んだはずのアルレインの意識は闇に溶けるわけでもなく、自分としてそこに立っていた。
熱せられた大地は不思議と熱くは無い。
「死んでいるから当然、か」
姉は助かる事が出来たのだろうか。
思い出しただけで、ブルッと身震いしてしまう。
変な液体をかけられてしまって美しい顔に火傷を負ってしまった姉。
神様がいるのなら、どうか姉を助けて欲しい。
「直談判すればいいのか。せっかく死んだんだもんね」
前向きに考えよう。
そう思って、神様に会うために歩き出したがどこまで行っても景色は変わらない。
「同じところをグルグル回る地獄ってこと?…疲れたー」
死んだのに疲れるっていうのもおかしな話だと思う。
その時、目の前の地面から炎が柱を立て一気に燃え上がった。
その光景を驚いて凝視していると、炎が爆ぜて中から緋色の短い髪を靡かせて空を見上げる女性が出てきた。
女性は何処かの騎士なのか、白銀の甲冑を身に着け剣を右手で持っている。
横顔しか見えないが、息を呑むほど美しい。
「貴女は誰…?」
思わず出てしまった言葉に女性がピクリと肩を震わせて反応すると、空から目をそらしアルレインの方を見る。
その瞳はアルレインが感情的になった時に染まる赤だった。
『ごめんなさい』
「え?」
『時は来た。頼れるのはもう、お前だけなの』
女性はそう言ってアルレインに剣を差し出した。
『私の力をお前に託すわ。…だから、どうか』
彼女の言葉を聞きながらどんどん意識が遠退いていく。
ダメ。まだ、意識を失っちゃダメだ…。
あの人はまだ話を続けてるのに。
足が身体を支えられなくなり、ゆっくりと後ろに倒れて行く。
倒れ行く中で、アルレインは女性に向かって手を伸ばしす。
『救って欲しいの』
「な、にを…』
『お願いね、アルレイン』
それを聞き終えた刹那、再び意識は暗闇の中へと引っ張り込まれた。