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聖火を宿す少女  作者: 紅月
燃えさかる炎
7/8

7話

 ロザリアは大蛇から槍を引き抜くと、血糊を振り払い肩の力を抜いた。


「片付いたな…。魅夜、治療の方はどうだ?」


 その問いかけに、丸太から女性を下ろして治療していた魅夜が難しそうな顔をする。


「最善は尽くしてるが…厳しいじゃろうな」

「諦めるなよ」

「るさいのぅ。諦めるわけ無かろう」


 一度目を閉じてから再び開くと魅夜の瞳が紫色に輝く。


「我も祝福を受けているのだ。簡単に諦めるわけにはいかぬ」


 魅夜は女性の顔の上に手をかざすと光を出して患部に注いでいく。

 その光景をロザリアとルフルが固唾を飲んで見守る。


「見てられないな」


 しばらくして、ロザリアがそう呟いて魅夜達から背を向けた。


「どこへ行くんですか?」

「あとの二人が遅い。迎えに…」


 不満そうにロザリアがそう言った刹那、今までもう片方の丸太を燃やしていた炎がまるで爆発するかのように激しく燃え出したかと思うと、まるで天を貫くかのように火柱が上がる。


「な、なんですか、あれ!?」

「何事じゃ!?」


 治療に専念していた魅夜も驚いて二人の元に駆け寄る。

 三人が唖然としてその光景を見ていると、しばらく轟々と燃えていた火柱が爆ぜた。


「!?」


 ロザリアが二人をかばうように前に出て、目にした光景に目を見開く。

 爆ぜた火柱の中から、緋色の長い髪をした少女が一糸纏わぬ姿で丸太に括られた姿で現れた。

 赤い虚ろな瞳でロザリア達を見た後、少女がゆっくり目を閉じたかと思うと、繋いでいた鎖が焼き切れたのか力尽きたように倒れかかり、それをロザリアが慌てて抱き止めた。


「おい、しっかりしろ!」

「…」


 ロザリアの呼びかけに応えず、少女はずっと気を失ったままだ。


「…彼女の言った通りか」


 マントの留め具を外すと、ロザリアは少女身体に掛けてやると抱き上げた。


「おい、ルフルいつまで恥ずかしがってる」


 耳まで真っ赤にさせて顔を背けていたルフルが首を横に振る。


「お、女の人の裸見たことなくって…!」

「もう大丈夫だ。それにそんなこと言ってる場合じゃないだろ」

「そんなこと言われても…」

「ウブじゃのうー」


 三人がそんな会話をしていると、森の奥から馬に乗って二人の男が姿を現した。

 それを見てロザリアが眉間にシワを寄せる。


「遅い!」

「仕方ないだろ〜?アルヴィンが酔ったって言うんだから。可愛い子なら喜んで看病するのになぁ」

「レオ、酷い…」


 顔を真っ青にさせてアルヴィンが馬から降りると、深呼吸する。


「おいおい、大丈夫か?」

「うぷっ、だ、大丈夫…」


 レオに背中をさすって何とか持ち堪えると、アルヴィンは背筋を伸ばした。


「後は僕の仕事だね…?」

「頼めるか?」

「ん」


 ロザリアの言葉にアルヴィンは短く応えると、しゃがみ込み地面に触れた。

 その瞳は灰色に染まっている。


「全てを飲み込み安らかな冥府へ」


 アルヴィンの言葉と同時に死んだ魔物憑き達が土の中へと沈んでいく。

 その光景を静かに見守った後、ため息をついて魅夜に向き直る。


「後は魅夜の仕事かな?」

「うむ、任せておけ」


 二人のやりとりを聞いた後、ロザリアは少女を抱いたまま自分の馬にまたがった。


「ここはアルヴィンと魅夜に任せる。護衛役にレオが残れ。ルフルは先に私と戻るぞ」

「また、面倒くさいことを押し付けるー!」


 レオの抗議を無視して、ロザリアは馬の腹を蹴りその場を離れる。


「すみません」


 ルフルも馬に跨るとロザリアの後を追う。


 目指すは聖都、ローゼンルミナスである。

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