2話
その涙に私の胸は張り裂けそうになる。
謝らなきゃいけないのは私の方なのに…。
「神よ!この悪魔に天罰を!!」
司祭の言葉が高らかに夜の村に響き渡る。
「姉さん!」
「さよなら、アルレイン。…愛してるわ」
姉さんは覚悟を決めたのか、そっと目を閉じた。
嫌だ!姉さんが死ぬなんて嫌だ…!
「姉さんは関係ない!!」
私の血を吐くような叫びは、司祭には全く聞こえてないようで聖水が入っているという瓶の蓋を開けてそれを高く掲げた。
神様!どうかいるのならお願いします!姉を…姉だけでもいいから助けてくださいっ!
「聖なる水に焼かれその姿を現わすがいい!」
「やめろぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!」
生まれてきて一度だってこんな大きな声で叫んだことなんかない。
神様にだってこんなに祈ったことだってない。
姉だけでも助けてほいしと願ったのに、聖水は司祭の手によって無慈悲に姉の顔面へとかけられた。
「ひっ!ぎぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁっ!熱い!!熱いぃぃいぃぃ!!!」
姉さんは顔から白い煙を上げて、耳を塞ぎたくなるような絶叫を上げた。
丸太に括り付けられているせいで、顔を覆うこともできず頭を狂ったように木に打ち続けている。
「姉さん…!姉さん!!」
それはあまりにも残酷な光景だった。
顔は赤く焼き爛れて美しかった姉の顔はもう、その原型を留めてはいなかった。
これならいっそのこと、殺してくれた方が楽だろう。
身を焼く熱さと痛みに狂ったように叫び、のたうつ姉を見ながらそう思い涙が溢れてきた。
「悪魔め…」
私の口から思わず出た言葉に、司祭を始め他の村人たちが私に注目した。
「悪魔っていうのはあんた達の事を言うのよっ!何もしてない人間によくもこんなことを…!」
憎い。
こいつらが憎くて仕方ない、今自由に動けるならこいつらを全員殺してやるのに!
「悪魔に相応しい死だろ?さて、お前には聖火で身を焼いてもらおうかと思っているんだ。生きたまま太陽神、アリスの炎で焼かれるのだ。幸せだろう?」
「クソが…!」
身体を揺さぶって縄を引きちぎろうと、もう一度試みたがやっぱりダメだ。
悔しさと惨めさと、姉に対する申し訳なさで涙が止まらない。
司祭とこの光景を笑いながら見ている村人達が許せない。
「生まれ変わったら、殺してやる…!全員!一人残らず!!」
私を焼く準備をする奴らに向かって捨て台詞を吐いて、私は姉の方を見た。