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友の消失とそれに伴う連続殺人事件に関する考察

作者: 本吉 光一郎

 全ての始まりは、山本友樹の失踪だった。彼が消えて、少しして。クラスメイトらが同じような消失を遂げ始めたのである。

 河上俊介が、消えた。

 野村正孝が、消えた。

 大浦慎吾が、消えた。

 浜崎が、真田が、二ノ宮が……。

 日に日に高校から、人が消えた。

 消えた……、消えた……、消えた…………。

 もう今は、千人を優に超える生徒数を誇っていた学校に、市民に親しまれたその場所に、二人の人間しか残っていなかった。その二人を除いては、教師も、生徒も、誰もいない。

 消えた人達は皆、音信不通で家にはいない。ただ、紅い池が広がるばかり……。

 つまり彼らは殺されたのだ。

 そして――。

 この学校に残ったのは僅か二名。私と彼の、ただ二人。私が犯人でないことは明白だ。したがって――犯人は、“彼”だ。

 私は彼を穿って、呟いた。

「犯人は、お前だったのか……」


 ◆ ◆ ◆ ◆


--生徒の会話:一ヶ月前--


 友樹が消えた――友樹って誰だっけ――二組の奴だよ、太鼓を叩く音ゲーが大好きな奴――ああ、あいつか――でもまあいっ――おい、友樹が消えたって本当かよ――ああ、間違いない――まじか――俺、友樹の様子を見に行ってみようかな――お前、あいつの家を知っているのか――うん。


--会話:三週間前--


 お前、この状況どう思う? クラスによってはだいぶ減っているらしいぜ――減ったってなんだよ、まだインフルの時期じゃないだろう――そうか、まだ知らないのか――何をだよ、勿体ぶるな――ひとが消えている――は?――毎日、一人か二人、生徒が消えている――何ふざけてんだよ――ひとが、消えているんだ……。


--会話:二週間前--


 うちのクラスも大分減ったな――まったくだ――教師まで消えて、どうしたら解決するのか――呪いだよ、きっと――呪い?――ああ、だから、俺がお祓いしてきてやるよ――お祓いか、それに希望を任せるしかないのかな――まかしとけ、無事にこの自体が収まったら、また遊ぼうな。


--会話:一週間前--


 このままじゃ、学校が全滅しちまうよな――  ――どうした、返事しろよ――  ――おい!――お前、いい加減にしろよ。一週間前から誰もいない席に話し掛けやがって、気味悪いんだよ――あっ……すまん。


--会話:五日前--


 この状況、本当ヤバイよな――  ――マジでなんとかならんのか――  ――お前、どう思う?――  ――ちゃんと、お願いだから返事してくれよ――  ――誰か、返事を……


--会話:三日前--


   ――  ――  ――  ――  ……。


 ◆ 


--私の回想:一日前--


 クラスによっては誰一人いなくなり、生徒も残すところ数名となった。これは学校が不祥事を隠そうと警察に連絡をしなかったのが原因の一端かもしれない。だが、私はまだ生きている。友人の伊東開太も一緒だ。だから、最後まで希望を失わずに生き残るんだ。出来ることなら、犯人を捕まえたい。

 私は決意した。


--回想:一時間前--


 今日の日が始まった。学校には、たった二名。生き残ったのが二名だから、片方は――犯人。

 私は犯人でない。よって、犯人は、私の友人。であるから……


 ◆ ◆ ◆ ◆


「犯人は、お前だったのか……」

 私は、友人を穿ったナイフを思わず手放した。

 チリリン、と音が響く。

 実に静かだった。

 誰もいない学校に、その金属音だけが、ひたすら木霊する。

 これで……。


 その時だった。何処からともなく、ゆったりとした拍手が聞こえてきたのは。

「実に見事だったよ」

 その、妙に落ち着いて、気味の悪い声の正体は、他でもない、――だった。

 彼奴がゆっくりと私の方へ近づいてくる。手には真紅の槍を持ち、目をギラギラとさせている。

「太鼓には厭きちまってな、バチの使い所を考えていたんだ」

 彼奴は壊れたロボットのような抑揚の無い声で語りかけてきた。

「それでバチを削って、こんな槍にしてみたんだ」

 口を動かしながらも、じわじわとこちらに近付き、逃げる隙を与えない。

 自分で言うのもなんだが、絶体絶命のピンチである。しかし、私は妙に落ち着いていた。それには、根拠もある。


 ――紅い液体にまみれて倒れていた、彼がスクリと立ち上がった。その静かな所作は、何故か私に、ゾンビという存在を思い起こさせた。しかし、彼はゾンビではない。生き人だ。

 伊東開太は静かに彼奴に忍び寄り、そしてはたいた。

 その衝撃で、彼奴の手から“バチ”が放れる。その真っ赤な槍は、床に転がった。彼奴は信じられないものを見るような目で、開太の方を振り向いた。

「何故、生きている……」

「何故、死んだと思った?」開太が答える。

「何故、殺したと思った?」私も答えた。

 彼奴は訳が分からない様子で、ただ呆然と私達の方に目を彷徨わせている。

「いや……、学校に二人しか残らなかったら、どちらかが犯人、ということになる筈だ。一方が他方を殺し、残りが真犯人を知った絶望のまま俺に殺される。それが俺の描いたフィナーレだったんだが……」

 虚ろな目をした彼奴は、機械のようにただ口だけを動かした。私は口を開く。

「友樹、お前は生きていると、最初から信じていたよ」 彼奴は動揺を浮かべる。

「何故? 俺の家には血溜まりだって作ってあった筈だが」

「あんなの、友樹の血かどうかを判別しえないだろう? お前は自分の家に最初に見舞いに来た奴を殺し、その血痕を自らの部屋に残しておいたんだ。学校は不祥事を隠そうと警察を呼ばなかったからね、二番目に友樹の様子を確認しに来た人はその見目と臭いで動揺し、友樹の家にまさか別の人の血痕が散らばっているなんて思いもしない。

 あとは簡単だ。お前は殺した奴の家に向かい、またそこに様子見に来た奴を殺す、という作業を繰り返せば良い。そうすればどの家でも二番目の来訪者が血痕発見者となり、全員が自宅で何者かによって殺されたというように思われる。

 尤も、友樹が生徒及び先生を全員殺したという訳ではないだろう? 後半には一日に何人も消えていて、それを片っ端から殺せるとは到底思えない。生徒の多くは、ただ単に自分が殺されるのを恐れて家に引きこもっただけだろうね。後半は一々各生徒の家に生死を確認しに行く余裕など学校にはなかっただろうから、せいぜいが電話確認だ。でも、学校にいると殺されると家に篭った生徒たちは学校との繋がりを何より恐れるから、誰一人電話に答えず、死んだと見なされてしまったんだ。

 これが事件の全容だ。この結論を開太と二人で出して、お前を罠に嵌めようと俺が開太を殺したふりをしたんだよ」

 私はかねてより二人で準備しておいた謎解きをつっかえずに言い切ることが出来てほっとした。私達の目の前では、山本友樹がひとり、項垂れていたのだった。

 読了ありがとうございました。こういう書き方はどうなのだろうか……?


 では、GNAHAND!

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