79 スマートフォン
わたしのスマートフォンが壊れた。
充電しようとすると、光が点滅するのだ。
わたしは、すぐに携帯ショップへと向かった。
そこで言われたのは、もう寿命だろうということ。
スマートフォンは大体二年が寿命なのだそうだ。
初めて知った。短くないか?
しかし、修理もできないならば仕方がない。
わたしは、機種変更をすることにした。
携帯ショップでの手続きは、滞りなく終わった。
問題は、その後だった。
以前は、アドレス帳などの移行はお店で行ってくれた。しかし今は、自分で全てのデータ移行をしなければならないそうだ。
わたしは家に帰り、データ移行をするべく、お客様センターへ電話をした。
わたしが電話で話していると、猫がやってきた。
わたしが床に座って二つのスマートフォンを操作していると、わたしにすりよってくる。
そして、わたしの真ん前に座り込んだのだ。
とても邪魔だ。スマートフォンの操作ができない。しかもわたしは、電話中なのだ。
固定電話で電話をしているので、わたしは動くことはできない。
仕方なく、わたしは猫を押しやる。
しかし、猫もそう簡単にはどかない。
猫は、わたしのスマートフォンを踏みそうになりながら、わたしの膝に乗ってこようとする。
この状態と、データ移行がうまくいかなくて、わたしは疲れてきた。
スマートフォンの中には、ウチの子(猫)の写真が沢山つまっているのだ。それを捨てる訳にはいかない。
なんとか猫を押しやり、二時間位電話して、ようやく写真のデータ移行ができそうになった。
わたしはほっとして、とりあえず電話を切った。
すると、猫がわたしに駆け寄ってきた。
猫にとっては、わたしが一人で話しているという、おかしな状態だったのだろう。
猫は、スマートフォンの取り扱い説明書を踏みつけて、わたしを見上げる。
わたしは、猫を撫でてあげた。猫も、わたしの関心が自分に移って満足気だ。
ごめんよ。わたしも大変だったんだよ。




