5 トイレ
一般的に、猫は綺麗好きだと言われている。
そのため、ウチには、猫用トイレが二つある。
一つは、開け放してあるケージの中、もう一つは、わたしの寝室だ。
トイレが汚いと、別の場所で粗相をしてしまうこともあるらしい。
しかし、ウチの子(猫)は、トイレの失敗例がない。間違えてベッドやソファの上にしたこともない。
自分のトイレはここだ、と分かっている。
何故分かっているのかは知らないが、トイレが汚いと、わたしに訴えてくるのだ。
ケージのある部屋は居間で、わたしは、よくそこにいることが多い。
猫は、ケージの中のトイレを使う時に汚れていると、わたしに向かって声をかける。
「くぅ」
その声に振り向くと、猫は、トイレの端に手を置き、こちらを見ている。
まるで、「トイレが汚いから入れないわ。早く綺麗にしなさいよ」と言っているようだ。
だが、わざと汚くしているわけではない。猫が先ほど「小」をしたため、トイレ砂が固まるのを待っているのだ。
「向こうのトイレは綺麗だから、あっちでしてきなさい」
一応、猫に寝室のトイレを薦める。
しかし、それが通じることはない。
ケージの中でトイレに手を置いたまま、無言で、じーっとこちらを見ている。
どうしても、ケージの中のトイレに入りたいようだ。
仕方なく、ビニール袋を持ち、掃除しようとすると、猫は、すっとケージから出てくる。
そして、掃除が終わると、ケージへ入ってきてトイレの匂いを嗅ぐ。
猫は、綺麗になったトイレに満足したように、中へ入り用を足す。
香しい匂いが漂ってくる。ざっざっと砂をかける音がする。その後、満足したように尻尾を立てて、猫が出ていく。
猫の手足となり、わたしが掃除をするため、ウチの子(猫)のトイレの失敗例はないのかもしれない。