4 キッチンマット
今日は晴れだ。洗濯日和だ。
普段の洗濯に加えて、マット関係も洗おうかなぁ。
キッチンマットを手にして振り返ると、猫が見ている。
「ん?どうしたの?」
猫は、わたしをじっと見つめる。そして、マットを見て、またわたしを見る。その目には、「それをどこに持っていくの?」と言っているようだ。
怖い。目で人を射殺せそうだ。そう、目力が強い。目力はいつも強いのだが。
どうしよう?いや、でもキッチンマットは洗わなければ汚い。
そういえば、猫は、よくキッチンマットに寝そべっている。自分の場所を取られた気分なのか?
「あのね、今日、このマットを洗おうと思ってるんだけど......いいかな?」
猫にお伺いを立てるなど、はっきり言って変だろう。
他人が見ていたら、「何やっているの?」と呆れて言うに違いない。
しかし、この家での序列は、猫の方が上だ。きちんとお伺いを立てなければいけない。
「このマット、洗うからね」
もう一度、猫へ念を押す。
猫は、先ほどからずっと、目を逸らさずこちらを見ている。
マットを洗うことに納得はしていないようだが、汚いマットをこのままにはしておけない。
一応、お伺いも立てたので、こちらから目を逸らし洗濯機に放り込む。
猫は、興味を失ったのか、別の部屋へ移動していった。
夕方、洗濯してふわふわになったキッチンマットの上に、猫が寝そべっていた。