36/715
36 お風呂
わたしがお風呂に入っている時、猫はバスマットの上で待っている。
基本的に、お風呂に入っている時は、お湯が飛び散るので扉を閉めている。
たまに扉を開けると、猫が入ってくる。
だが、床が濡れているのが嫌なのだろう。手足を振って水気を散らしながら進む。
そして、湯船に入っているわたしを見て、中を覗く。
お風呂の中に入ってくるかと、わたしがわくわくしていると、そのまま踵を返して出ていく。
わたしは、そんな猫に声をかける。
「ちゃんと足拭いてから出てよ!」
しかし、当然のことながら、猫は聞いていない。わたしがお風呂から出ると、猫の足跡が点々とついている。
また別の日、湯船のお湯を抜いていると、猫が入ってきた。
そして、湯船の縁に飛び上がった。
湯船の縁も濡れていたのだろう。猫は滑って湯船に落ちてしまった。
あっ!と驚いたが、お湯はほとんど抜けていた。
しかし、猫はびっくりしたのだろう。慌ててお風呂から逃げていった。
そして、濡れた体を毛繕いしていた。
猫は、もうお風呂には入ってこないかもしれない。




