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25 無口な子
ウチの子(猫)は、無口だ。ほとんど鳴かないのだ。
声を出す時にも口を開かない。
喉を鳴らすように、「クゥ」「クルル」と鳴く。
猫は、鳴かない代わりに、態度で示す。
わたしが床に座って本を読んでいると、まず、わたしの正面に座る。
そして、わたしを見つめる。じーっと見つめる。目を逸らさない。
わたしが、そのまま本を読んでいると、前足をわたしの足に乗り上げ、わたしの手を叩く。
さらに、そのままでいると、猫はわたしの足に座り込み、わたしの手を引っ張る。
そして最後は噛みつくのだ。
わたしが「痛い!」と言うと、猫はターッと走って逃げるが、その後また同じことを繰り返す。
この猫の行動は、ごはんが欲しいのだ。
無口な猫が口を開くのは、ごはんを見た時である。
猫にごはんを見せると、
「ミャ」
と口を開き、嬉しそうに小さく鳴く。
猫は口を開くことが面倒なのだろうか。




