21 健康診断(前編)
猫の健康診断として、年に一度病院で血液検査をしてもらっている。
また今年も、そのために病院へ行かなくては。
以前、猫をキャリーバッグに入れる時は大変だった。猫を捕まえてキャリーバッグに入れるのだが、抵抗が激しく、わたしの背中まで爪を立てて登ろうとする。
あまりにも大変なので、キャリーバッグを変えた。前のキャリーバッグは、ふにゃりと倒れてしまうのだが、新しいものはしっかりとしている。
そこで、新しいキャリーバッグの中でごはんをあげ、慣らすようにした。
すると、猫はキャリーバッグの中で、ごはんを食べるようになった。
そして今回も、ごはんをキャリーバッグの中に入れて、猫を誘う。猫はキャリーバッグの中で、ごはんを食べ始めた。
今だ!
わたしは、キャリーバッグのファスナーを上げて、猫を捕獲する。
成功した。
猫は、何が起こったかわからないようで、キャリーバッグの中をぐるぐる回っている。
わたしは、猫を連れて病院へ行った。
「おはようございます。血液検査をしてもらいたいのですが」
「はい、お待ちください」
診察室のドアが開く。
「朝、ごはんは抜いてますよね?」
「えっ、ごはん抜くんでしたっけ?」
「そうですよ。食べてきちゃいました?」
「はい、すみません。また出直します。あっ、う○ちの検査だけでもお願いします」
あぁ、猫に可哀想なことをしてしまった。う○ちだけでも持ってきて良かった。
その時先生が「体重だけでも測りましょうか」と言ってくれた。良い先生だ。
わたしは、「太っちゃったんです」と言う。
猫を診察台に乗せようと、キャリーバッグの上のファスナーを開く。猫は、キャリーバッグに入れてあるバスタオルの下へ隠れようとしている。はっきり言って丸見えだが。
猫を、無理矢理バスタオルから引き剥がして、診察台に乗せる。
猫は、腰が抜けたように、這って逃げようとする。わたしは、ガシッと猫を捕まえる。
そして、体重計を見て驚く。
「えっ、2.85kg?」
「この子、太ってないですよ」
「でも、お腹に肉が、皮が」
わたしは、訳のわからないことを言ってしまった。
先生は猫を横にして、お腹を診てくれた。
「ここに肉がつくんですが、ついてないですよ」
「そうなんですか」
太っていると思っていたが毛だったのだろうか。とにかく安心した。
先生にお礼を言って帰宅する。家に着いて、猫はほっとしたようだ。