15 いたずら
ウチのキッチンにある椅子には、わたしの上着を掛けてある。
椅子の下に猫が隠れるためだ。
椅子の下に隠れて、わたしを驚かせるのが猫の楽しみのようなのだ。
わたしが椅子の近くを通りすぎる時、猫がばっと椅子の下から出てくる。
「わー、びっくりした」(棒読み)
猫が出てくることがわかっていても、驚いてあげなければいけない。
わたしが驚いたことに満足した猫は、尻尾を立てて去っていく。驚かせることに成功したと思っているのだろう。
立て掛けてある鏡の後ろから、飛びだしてくることもある。頭だけ隠れて、お尻が出ている。
「頭隠して尻隠さず」
という言葉が脳裏に浮かぶ。
しかし、本人(猫)は気づいていない。そこが可愛いのだが。
同じように、わたしが鏡の横を通りすぎる時に飛びだしてくる。
「わー、びっくりした」(棒読み)
やはり驚いてあげると、猫は尻尾を立てて去っていく。
その後ろ姿を、わたしはニヤニヤしながら見守る。
そんな時、わたしがぼーっと歩いていると、猫がキッチンにある椅子の下から飛びだしてくる。
「ぎゃあ!」
本当に驚いた。
猫は満足したように尻尾を立てて去っていく。
わたしはドキドキする心臓を抑える。
そうだ。猫はどこに潜んでいるかわからない。油断は禁物だ。
しかし、わたしの決意もむなしく、猫に驚かされる日々となりつつある。




