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140 ごはんの準備中に
わたしが猫のごはんを準備している時だった。
猫のごはんは、キッチンのシンクの下に入れてある。わたしは扉を開けて、猫のごはんの袋を出してから、一旦扉を閉める。
しかしその日は、扉を閉め忘れてしまっていた。
食欲魔神である猫が、そんなチャンスを見逃すはずはなかった。
猫は、すっとシンクの下の扉に顔を突っ込んだ。そして猫の口には、別のごはんの袋がくわえられている。そのまま逃げようとする猫の様子にようやく気づき、わたしは声をかける。
「こらこらこら、それを離しなさい」
わたしは、猫の口にくわえられているごはんの袋を引っ張った。
しかし猫も、そう簡単には離さない。
わたしは猫の頭を押さえ、ごはんの袋を無理矢理引き剥がす。
まったく、油断も隙もない。
ごはんの支度をしているというのに、別のごはんを盗み出そうとするとは。
ウチの子(猫)の食欲は、どこからくるのだろう。




