14 避妊手術
ウチの子(猫)は女の子だ。
子供を生むわけではないのならば、避妊手術をした方が良い。
家猫だが、発情期には体力を消耗するらしいのだ。
避妊手術は、大体生後六ヶ月以降で、大人の体つきになってからするそうだ。
ウチの子は、生後七ヶ月の時にすることになった。
いつもの病院で手術後、一泊して様子を見るとのこと。
初めての手術に外泊だ。心配だが、病院の先生にお任せするしかない。
手術の日は朝ごはんは抜いて連れていくよう言われた。可哀想だが仕方がない。
ただ、病院へ連れていく時間は、午前中ギリギリの十二時少し前にした。少しでも病院にいる時間を少なくするためだ。
嫌がる猫を病院へ連れていき、先生にお願いする。後ろ髪を引かれながら、わたしだけ帰宅する。
翌日病院へ引き取りにいくのは、午後の診療時間だ。午後は三時から診療が始まる。
わたしは、三時ぴったりに病院へ到着するように家を出る。
午後の診察は、わたしが一番だったようだ。
受付で名前を伝えると、「あぁ、猫ちゃんですね」とすぐに通じた。
わたしは、「ウチの子は大丈夫ですか?」と聞くと、ウチの子は先生にシャーッと威嚇したとのこと。病院へ連れていく時も、威嚇なんてしたことないのに。よっぽど怖かったのだろう。
手術自体は無事終わったらしい。
しかし、ごはんも食べず、トイレにもいかないらしい。知らない場所で、どれだけ我慢しているのだろう。
わたしは、すぐに診察室へ飛び込んだ。
そこには、診察台の上にウチのキャリーバッグに入れられた、ウチの子がいた。
わたしは猫の側に直行し、「大丈夫?」と聞く。
そして、はっとして先生を見る。
「すみません、ありがとうございました」
と先生に言うと、先生は笑って「手術は無事成功しましたよ」と言ってくれた。
わたしは、猫に向かって「よく頑張ったね。えらいね」と言った。
すると先生は、「そうそう、そうやって褒めてあげて」と言ってくれる。
再度、先生にお礼を伝え、猫と一緒に家路につく。
家に着き、猫をキャリーバッグから出す。真っ先にトイレへ飛び込んでいくと思ったが違った。
猫は、わたしにすりよってきたのだ。お腹が空いているだろうに、トイレに行きたいだろうに、真っ先にわたしにすりよってきたのだ!
わたしは泣きそうになった。わたしを頼りきっているこの子を守らなければ、と強い使命感に襲われる。
ひとしきり猫を撫でてあげると、猫も安心したようで、トイレへ飛び込んだ。
そして長い間座り込んでいた。ずっと我慢していたんだね。
その後ごはんを食べ、すぐに寝てしまった。
あぁ、この子はペットホテルにも預けられないなぁ。




