122 最後の扉 ☆
ウチの子(猫)が子猫の頃、一部屋で過ごさせることに失敗し、入られたくなかったトイレや洗面室にも出入りするようになった。
しかし、あるひとつの扉だけは出入りしたことがなかった。
それは、玄関の扉だ。
猫を外に出す気はなかったので、玄関から出たことはないのだ。
ウチの玄関は二重になっている。外へ出る扉があり、玄関を入ってすぐに内扉がある。
猫は、内扉と玄関の扉の間には出たことがある。
わたしが内扉を開けたら出てきたのだ。
でも、わたしが気付いて、玄関の扉を開けることはなかった。
しかし、猫にとって、知らない扉は気になるらしい。
ある日の朝、わたしがごみを出しに行こうと内扉を開けると、猫がやってきた。
どうしても玄関の扉の外を見たいらしい。
わたしは、少しならと思い、猫を抱っこして外を見せようと、玄関の扉を開けた。
すると、猫は、外の空気を吸った途端、わたしの胸を蹴り、家の中へダイブした。
猫が外へ行くのは、キャリーバッグに入れて病院へ連れていく時だけだ。
どうやら猫にとっては、外イコール病院と思っているようだ。
確かに、猫がそう思っていても不思議ではない。
それ以来、猫は玄関の扉だけは近づかない。
宅配便がきて、玄関の扉が開いていても、遠巻きにしている。




