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109 ケージの下
猫が最近お気に入りのおもちゃである、針金に毛が生えたモールをくわえてきた。
何をするのかと思ったら、猫は、モールをケージの下の隙間に入れてしまった。
そこがおもちゃの隠し場所かと思いきや、猫はモールをすぐに出した。
よく見ていると、猫はモールをケージの下の隙間に出し入れして遊んでいるようだ。
なんだ、隠し場所じゃないのか。
わたしは、本の続きを読もうとした。
すると、猫はモールを自分では手の届かない奥へ入れてしまったようだ。
前足を一所懸命奥へ入れている。
だが、前足は届かなかったようだ。
猫は、わたしを振り返って見る。
わたしにモールを出して欲しいようだ。
仕方がない。わたしは、猫のおもちゃである棒をケージの下に入れてみた。
そして、手前に引く。
取れた。埃まみれのモールが。
わたしは、丁寧に埃を取り、モールを猫に差し出した。
しかし猫は、既に興味を失ってしまったようだ。
匂いを嗅いだだけで行ってしまった。
せっかくのわたしの苦労はなんだったのだろう。




