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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第九十八話 助脚

 何の気負いも見せず、積んである岩場までゾウスイが出た。

 敵の先群はほぼ動けなくなっているが、後群は次々と北壁を越え、侵入してくる。それはどれもクルマ族ばかりで、クロトラ族の姿は見えない。

 北壁の上に、マ族の戦士たちの姿は見えない。皆喰い果たされたのか。それともうまく逃げたのか。どちらにせよ、もう戦うことはできまい。

 敵の二頭が新たに登って来る。

 ゾウスイが刀を振るう。一頭が両断され、落ちてゆく。

 隣に進み出たカニカマが力任せに棒を振る。速度が落ちたクルマ族のもう一頭は避けることもできず、水中を跳ねて、やはり坂の下まで落ちていった。

「ここは、任せよ」

 ゾウスイの言葉に、小さく頷いて了承を返した。戦士たちに指示を出し、列を組み直させる。

 この助脚はありがたい。長く戦いを続けてきたゾウスイだけあって、戦の大事な勘どころを心得ているようだ。

 敵にクルマ族よりさらに大きな種族がいると聞いてから、ゾウスイはそれを食い止めるために働いてもらうつもりであった。だが、ここを抜かれては、それどころではない。

 そして、敵の大頭格と戦えないことは、ゾウスイにとっても残念なことなのだ。

 だから、ここに出てきた。そういうことなのだろう。

 ゾウスイが刀を振るい、カニカマが棒を振り回すことで、敵の勢いを押し返しつつある。その隙に、アカシはマ族の戦士たちを立て直す。

 その傍に、斑の体表を持つ一頭が寄って来た。ワモン族のツクダニだ。

「伝令。敵の一群が、ここに向かわず集落の周囲を巡っている。クロトラ族という小さなものばかりで、数は三十ほど。おそらく、別の侵入口を探っている」

 まずい、と即座に思った。表の攻勢に気を引きつけている間に、別の場所から侵入し、喰い荒らす腹積もりだろう。

 わかってはいたことだが。殻盾の使い方といい、群れを分ける考え方といい。敵の中にも、群れでの戦い方をよく知るものがいるようだ。

 この別群れは、何とかせねばならない。鋏討ちにされるのがまずいのはもちろんだが、それより何より、ミズ族の集落が見つけられるのは、もっとまずいことだ。

「タコワサ。六頭を引き連れてゆけ。アヒージョと、ジェノベーゼの脚を借りよ。ツクダニ。ワモン族の助脚を願えるか」

「もちろんだ」

 ツクダニと、マ族の戦士を六頭連れたタコワサが素早く消えた。

 戦列に目をやる。何とか、敵の群れを押し返しつつある。殺到している敵の数は増えているが、ゾウスイとカニカマの奮闘が凄まじい。種族の力の差、というものを、アカシは改めて味わっていた。


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