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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第八十七話 群略

 マ族の集落に八つの種族が集結しつつある頃。

 集落より北の地。マ・リネリス渓谷の南岸に蠢くものどもがいる。

 いくらかの種別の差があるが、どれもが堅い甲殻を身にまとっている。その身体は細長く、地につけた腹の側には多数の脚が見て取れる。

 クロトラ族。クルマ族。ボタン族。それらの種族名を持つ長き殻どもだ。

 その中に二頭、一層大きな身体を持つ個体がいる。

 うちの一頭である、イセ族のフナモリは忙しい。

 意図せぬ出来事が、いくつも起こったことが要因である。

 第一次の突撃を計ったのはフナモリだ。配下であるクルマ族の大将、チャワンムシを筆頭として、クルマ族とクロトラ族との混成群で一斉突撃を仕掛けた。

 その一撃で、南の種族は崩れ去る、と。そう思っていた。

 だが結果はどうだ。やつらは、長き殻どもの攻勢を弾き返したのだ。

 フナモリにとって、これは驚くべきことだった。

 敗因はわかっている。調べが、足りなかったことだ。

 フナモリが認識する限り、敵はマ族と呼ばれる殻を持たぬ柔らかき者どもだ。力は弱いが器用で、八本の触手を自在に操る。また、環にある様々なものを己たちの使いやすいようにして用いる。

 これらのことは、討ち滅ぼしたタラバ族からの聞き取りで得ていた。だが、それはあくまで伝聞であり、そもそもタラバ族は彼らをさほどの脅威とはみなしていない節があった。

 そこで独自に調べてみようとはさみを伸ばしたのだが、わかったのは侵入が容易ではない、という事実だ。

 マ族という種族は、とかく隠遁、察知能力が高い。身体が大きく小回りの利かぬクルマ族やボタン族では、とてもではないが気付かれずの諜報などできぬ。すぐにそれがわかった。

 仕方なく、オマール族のパエリア配下のクロトラ族に頼んだが、こちらも碌に報せが上がってこない。失敗したのか、パエリアが制限しているのかはわからぬ。わかったのは、彼らについて詳しく知ることは難しい、ということだった。

 それもあっての、一気呵成の突撃戦であった。

 敵は備えをしていた。それも、長き殻どもに対するに適切な備えを、だ。

 こちらの戦い方が漏れているであろうことは、フナモリも認めていた。だが、よもやこれほどまでとは。

 群略を解するものがいる。フナモリが思ったのは、それだ。

 タラバ族との戦いは、到底戦と呼べるようなものではなかった。タラバ族とのそれは、ただ単なる力と力のぶつかり合いであり、フナモリが少し集団戦や奇襲の働きを差配すれば、脆くも崩れた。彼らがそれにする対処はただ、卑怯だぞ、と叫ぶばかりであった。

 だが。この種族は違う。この種族は、群れで戦うということを知っている。

 それは、年老い衰えつつある身が、引き締まる思いであった。


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