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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第八十五話 刀

 見せてもらってもよいか、と問うと、ゾウスイは気安くそれをアカシに寄こした。

 それが武器であることは、すぐにわかった。

 やはり、片側を、持ち手の部分を残して削り、刃物にしてある。大きさはズワイ族であるゾウスイにあわせてあり、アカシの槍ほどもあるのだが、それほどに重さは感じさせない。重みを上手く、各部に分散させているのだろう。

 そして何よりアカシが注目したのは、刃の部分だ。

 鋭く研がれている。集落にあるどの刃物を持ってきても、これほどに鋭いものは存在しないだろう。そう思わされた。

 マ族が使う槍の穂先にも、刃がつけられている。だがそれは熟練の戦士の技量でもってして斬り裂き、貫き通すものであり、誰しもが刃を刃として使えるものではない。これは集落で使われている様々な刃物も同様だ。

 だが、シオカラがつくったというこの武器はどうだ。戦士でない者が振るっても、殻を持つものどもに傷を負わせることができそうではないか。

 こんなものがあるのか。アカシが感じたのは驚きと。それから羨望と嫉妬と憤りであった。

 道具を扱うことにかけては、己たちが随一であろうと思っていた。もちろんケンサキ族のことは聞き及んではいたが、実際には言われるほどの差はないであろう。こころのどこかで、そう思い込んでいた。

 だが今これを目にして、アカシはその差に絶望的なものを感じている。

 これが。これが、ケンサキ族か。

とう、と僕は呼んでいます」

 シオカラが答えた。

 刃よりもさらに鋭いもの、という意味を持つのだという。刀、と口の中で何度か繰り返した。

 改めて、刀を眺めた。やはり、様々な思いが湧きあがってくる。

 これがあれば。これが、マ族のもとにあれば。生き残れるものはもっと多かったのではないか。死なずに済んだものは、多かったのではないか。

 多くの幼子のための餌を、獲ってくることが、できたのではないか。そのような思いに、アカシは捉われていた。

 気持ちを押し殺して、ゾウスイにそれを返した。やはり流れるような所作で、ズワイ族の戦士は刀を納める。

 シオカラに向き直った。

「我々にも、つくれるだろうか」

 問うた。問わずには、いられなかった。

「研鑽を積めば」

 シオカラは答えた。

 二頭を促す。道の先には、アカシたちの集落があった。


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