第八話 尋問
マ族の戦士たちはすぐさま三頭のタラバ族を取り囲んだ。一応槍を突きつけ警戒をするが、そのうち二頭はまったく抵抗するそぶりがなく、残った一頭は、いまだ目を回したままだ。
「何があった」
アカシは今一度問いただした。石突きで地面を強く叩く。タラバたちは慌てていた。急がねばならない事情があったのだろう。時間を割いている暇はなかった。
「こ、この先に、俺たちの集落がある」
一番若そうなタラバが口を開く。アカシは訝しげな表情を浮かべる。森の中にタラバが集落をつくるというのは、あまり聞かない。
「逃げてきたんだ」
もう一頭の気弱そうなタラバが悔しそうに言った。
「もともとの俺たちの集落は、もっと北の、海藻が点在する岩場にあった。クリセ、と呼ばれている土地だ。知っているか」
アカシは頷いた。マ族の集落から、マ・リネリスと呼ばれている渓谷を越えたさらに北にある土地だ。その周辺に住むタラバ族とは、渓谷の資源を争って何度か戦ったことがあった。
「それがどうして、谷を越えてこちらまで来ている」
タラバたちは何やら言いにくそうにしている。だがアカシが睨みつけると、黙っていても仕方がないと思ったのか、渋々口を開いた。
「谷の奥から、見たこともないヤツらが現れた。最初は俺たちの仲間かと思ったが、違った。そいつらは、俺たちの集落を襲い始めた」
それは強大な敵だった。タラバたちは反撃したが、それは容易く押し返され、多くの戦士がその新たな敵に食われた。タラバの集落は、次々と落とされた。
タラバ族の集落がもとの半数にまで減少した頃。集落の若者であった彼らは、老頭たちの命で外へ逃がされたのだという。
そうして何頭かがこの海藻の森までたどり着き、細々と新たな集落を形成していたというのだ。
「北の岸はほぼ、やつらに占拠されていた。南の岸もやつらに攻められて、もはや安全じゃなかった。それで俺たちは、この森まで逃げてきたんだ」
タラバの背が、小さく丸まる。アカシは彼らの言葉を、戦慄を持って聞いていた。