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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第七十七話 変事

 もう一つの騒ぎは、もっと深刻なものだった。

 肉を配り終え、訓練を終えて、一息ついていたときのことだ。

 南門を守っている雌戦士の一頭が、報せを持ってやってきた。

「使者の一頭が、戻っております」

 早い、と思った。長老の知識が正しければ、最も近いワモン族の集落でも、往復でもう一うねりほどはかかるはずだ。何か尋常でないことが起こったとしか、考えられなかった。

 タコワサを連れ、急いで南門へと向かった。

 壺の並ぶ中央通りを抜けた先で、戦士たちが集まっている。その中に、いるはずのない姿があった。

 アカシを認めて戦士たちが道を開ける。門の前に、一頭の雌戦士だけが残った。

「何があった」

 静かに問う。雌戦士は、何とも言い難い、複雑な表情を見せている。どう切り出せばいいのか。迷っているように感じられた。

 ジェノベーゼという名のその戦士は、ケンサキ族の集落へと向かったはずだ。その場所はワモン族の集落や棘持つものどもの集落よりも遠い。また、ケンサキ族は一定の地を移住して暮らすことから、発見することも困難であると考えられていた。

 そこへ向かったはずのこの雌が、どうして戻ってきているのか。

「実は」

 と切り出して、ようやく話し出した。

 一うねりほど、ケンサキ族がいると思われる南西の方角へ、ジェノベーゼは泳ぎ進んだ。そこまでの旅路には何の変りもなく、何度か大型の魚や知恵持つ種族の影を見ることはあったが、比較的平穏に進むことができた。

 変事に遭遇したのは、泳ぎ疲れて休みを取っていた時のことだ。

 近くで争いの波を感じた。岩陰に隠れながら泳ぎ近づいてみると、二つの種族が争っている。

 種族は違うが、両者とも、殻持つものどもだ。

 巻き込まれてはかなわぬと思い、すぐにその場を離れようとした。だがその視界に、見過ごせぬものをジェノベーゼは見たのだ。

 争い合う二頭の後方に、一頭の柔らかきものがいる。その体表は白く、マ族やミズ族に比べてほっそりしている。

 そして、その柔らかきものが持っている触手は、ジェノベーゼのそれより多いように思える。

 もしかしてあれがケンサキ族ではないのか。すぐにそう思い当った。

 だが、ケンサキ族は大抵群れを成しているとジェノベーゼは聞いている。それがなぜこんなところに一頭でいるのか。


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