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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第七十四話 騒ぎ

 オドリグイとナムルが棘持つものどもの集落に到着していた頃。

 マ族の集落では騒ぎが二つ、持ち上がっていた。

 騒ぎの一つ目は、タラバ族の若者、カニカマが引き起こしたものだ。

 食糧不足の報告を受けた長老は、ひとつの決定を下した。

 集落に捕えている、カニカマ以外の二頭のタラバ族。それらを仕留め、当座の食糧とすることを決めた。

 通達を受けた二頭は静かなものだった。敗れれば相手の糧となる。それがこの環のならいだ。はじめから今まで、一切マ族に協力する姿勢を見せなかった二頭は、すでに覚悟を決めていたようであった。

 抵抗したのはカニカマだ。己が許されたのだから、当然、残りの二頭もいつかは許されると、そう思い込んでいたのだ。

 それは誤りだ。役に立つつもりがないなら、別の形で役立たせる。アカシとてはじめからそのつもりで、集落まで引き連れてきたのだ。

 暴れるカニカマは、アカシとタコワサ、ウスヅクリとで静かにさせた。そうして、三頭がかりで広場まで引っ張ってきたのだ。

 仲間の最期をカニカマに見せる。これは儀礼であり、義務であり、そして慈悲でもある。

 二頭の若タラバが広場に引きずり出される。その周囲を、槍を持った戦士たちが取り囲んだ。

「突け」

 命を下す。二頭の断末魔とカニカマの叫びが唱和した。

 抑えつけるウスヅクリの棒から抜け出そうとカニカマがもがく。立ち上がろうとするその脚を老頭は素早く払い、目の間を鋭く突いて意識を奪った。

「見せぬ方がよかったのでは」

 解体の指示を出していたタコワサが、倒れたカニカマを見ながらそんなことを言う。

「己で選んだことだ。こやつも。あの二頭も。こやつは、それを見届ける必要がある」

「だが、これを恨みに思い、戦の最中にでも裏切ったなら」

「なれば、仕方があるまい」

 カニカマを戦士に加えると決めたのはアカシだ。ならばアカシは、その責を負わねばならない。

「ま、もう少々、教え諭す必要はあるやもしれませんなあ」

 やはり倒れ伏す若タラバを眺めつつ、ウスヅクリも言った。

「考えておこう」

 何よりもまずは食糧だ。アカシは思考を切り替え、指示を出すため副官と小頭たちへ触手を向けた。


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