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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第七十話 二つ舞

 ナムルが加わり、脇を務める。ナムルには道中、この舞の動作と呼吸を伝えてあった。修練は足りていないはずだが、槍を上手く使い、長き殻どもに擬態している。広場で舞ったマリネの動きからも、幾分か盗み取ったようだった。

 さすがやな、と内心思いつつ、細やかな動作で呼吸を伝える。すぐに合わせてきた。

 三の触脚、五の触手。六の触脚、二の触手。それから六の触手舞。水を震わせ、波紋を刻む。

 ナムルと相対した。

 幻の槍で突く。ナムルが手に持つ槍で迎え撃つ。ここは殻持つものどもの恐ろしさを伝えねばならない。ナムルの勢いは少し強さに欠ける。

 ひと動作を挟んで、同じ突きを繰り返す。今度は先ほどより鋭く。それで得心したようだ。鋭く強い動きが返ってきた。

 回転。乱舞。意図的に舞の流れを乱す。戦いが激しいものであったことを見せつける。ナムルが必死で喰らいついてくる。

 肉体的なことだけでいえば。戦士として鍛え上げられ、またマ族でもあるナムルの方が速く、強い。だが一つ一つの反応、繋ぎ。そして何より、動かすことより留めること。それらの技は、まだまだオドリグイに追いつくものではない。

 技巧の不足を強靭さで補い、この雌の戦士は二つ舞を維持している。

 いつまで保つかはわからない。だが、保ってもらうしかないのだ。

 一頭で舞うこともこころの片隅で組み立てながら、オドリグイは舞いを繋ぐ。気付かれぬ程度に、ほんのわずかだけ速度を落とす。

 棘持つものどもが舞を解さない、などという考えはオドリグイにはない。舞うことは、まず己との戦いなのだ。

 そして何より。伝えることに触手を抜くことがどれほど恐ろしいことか。オドリグイはよく知っている。

 誤りを伝えたら、あかんのや。

 ナムルとの二つ舞を崩さぬように。すべてを出し切りつつ、なおかつナムルに合わせて舞を細かく整える。

 長き殻どもの強さを見せつけて、終盤の舞へと移る。アカシが奇策を用いて、長き殻どもに強力な一撃を入れる。表現と動きの難しい部分だ。

 果たして、ナムルの呼吸が一拍遅れた。

 咄嗟に触脚での一歩を加え、ナムルに伝える。気付いたナムルは瞬時に合わせてきた。

 オドリグイが突き込む。ナムルが受ける。

 回りながら、水中を飛んだ。

 ナムルの胴上から槍を突き入れる動作を入れると、ナムルはすべての触手を伸ばし、地に沈んだ。

 槍を刺す動作のまま、オドリグイは動きを止めた。それが、舞納めの場面であった。


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