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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第一幕 会
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第七話 タラバ族

 すぐには攻撃を指示せず、状況を確かめる。

 周囲に素早く目をやる。伏兵の気配はない。森の奥から現れたのは、その三頭だけのようだった。

 タラバたちを観察する。

 どれも甲羅がまだ赤く、棘が少ない。上足であるはさみも小さいものが申し訳程度についている。まだ若い個体だ、とアカシは判じた。

「どうしますか、大頭」

 傍にいた小頭が尋ねる。

「俺が捕える。お前たちは守りを固めよ」

 四本持ちの槍を駆り、飛び出した。

「止まれ!」

 先頭のタラバに大音声で告げる。横向きで暴走していたタラバの身体が縦に転じた。

「そこをどけ! 殻なしども!」

 同様の大声でタラバが叫ぶ。意に介さず、立ち塞がった。

 タラバは総じてマ族より身体が大きい。だが目の前のタラバたちはまだ、アカシと同じ程度の大きさしかない。

 そしてマ族にしては大きいアカシに気付いて、タラバたちはやや驚いたようだった。

「何があった」

 アカシは聞く。だが、返ってきたのは罵声だった。

「貴様ら殻なしに教える必要はない! そこをどけ! 叩き潰すぞ!」

「やってみろ」

 はさみが落ちてきた。身体を捻り、それをかわす。

 突然の攻撃だったが、それは粗いものだ。そのひと振りから、アカシは相手の力量を感じ取った。

 ただ力のままにはさみと身体を振り回すだけの若戦士。いや、いまだ戦士ですらない。それがアカシの判断だった。

 はさみと太い脚が振り回される。その隙間を、変幻自在にすり抜ける。身体が通る隙間さえあれば、どのような攻撃もかいくぐる。それがマ族一の戦士であるアカシだった。

 タラバが大きく腕を振り上げる。機を逃さず脚元に潜り込んだ。

 回転した槍の石突が、下からタラバの目と目の間を撃ち抜く。

 若いタラバは一瞬持ちこたえたが、それだけだった。口から泡をぶくぶくと吐き出したかと思うと、そのままあおむけに倒れた。

 槍を構え直したアカシは、すぐさま残り二頭のタラバと対峙する。だがその二頭は、ただ脚を縮こまらせ、ぶるぶると殻を震わせるだけだった。


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