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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第六十話 圏

 沈黙が、場を支配していた。

 ようやく口を開いたのは、族長だ。

「つまりマ族とワモン族を一つのものにせよ、と」

「はい」

「できぬ相談だ。我々では生き方が違いすぎる」

「すべてを一つにする必要はありません。生きる術を、一つにすればいいのです」

「互いの集落は、あまりに遠すぎよう」

「安らかに集落を営める場があればいいのです。その場を、圏をマ族とミズ族、ワモン族とでつくらないか。これはそういう話です」

「むう……」

 考え方そのものを提示する。それがカルパッチョの採ったやり方だった。ワモン族の思考は内輪で凝り固まっている。そこに乗っかる限り、説得はあり得ない。そう考えていた。

 融和はできない。ならば、ワモン族をその形のまま、もっと大きな圏の中に取り込む。それがカルパッチョの考えだ。

「ワモン族はまだ出会っていませんが。我々が対峙している殻持つものどもが、マ族を食い滅ぼし、その後もそこに留まるかどうかはわからないことです。止まらないとわかったときには、もう遅い」

「今ならまだ、防げると。そう思うのかね?」

 カルパッチョはかぶりを振った。

「戦わないあたしにはわかりません。やつらの姿を見てもらうのが一番いい。けど、それからの決断では遅いんです。今でないと」

 むう、と族長は再び唸り、考え込むそぶりを見せる。

 アヒージョは驚きが先に立っているのか、怒鳴り出す様子はない。カルパッチョは待った。

「話はわかった。お主に理があることも、認めよう」

 族長がようやくといったふうに言う。だが、その体色は重苦しいままだ。カルパッチョはこころを働かせる。考えつく限りのすべての可能性を予測する。どの触手を次に切り離すべきか。それを狙っている。

 これが、メン族の娘の戦いだった。

「だがな。それでも我々ワモン族は、お主らマ族を信用できんのだ。吸盤を合わせる気に、なれんのだよ」

 族長が続けた言葉はそれだった。それはカルパッチョではなく、アヒージョの方へ向けて発されている。

 戦士たちが大物を狩ったときの気持ちというのは、こういうものなのだろうか。そのような思いを、カルパッチョは抱いていた。

 捕えた。こころのうちだけで、カルパッチョはそう、確かめていた。


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