第六話 探索
部隊を率いて森に入った。
森は珊瑚山の上からではかなりの密度がありそうに見えたが、いざ入ってみると、部隊が充分に進行できるだけの隙間はあった。海藻の色が濃いため、遠目には詰まって見えるのだ。
タコワサを後衛に置き、縦列を二つに分けて進む。全員が、体表を海藻と同じ色に偽装している。目立たぬよう、泡を立てずに戦士たちは歩んでいく。
海藻は平たく厚く、アカシたちが進める道は少ない。本来なら探索と同時に刈り取りを行っていきたいところであったが、生憎マ族は刃物の類を数多くは所持していない。柔軟な肉体を持つが、鋭い爪やはさみを持たないマ族の弱点でもあった。
タコワサは森に入ることに反対した。アカシたちマ族は海藻の深い場所での戦いに慣れていない。広い砂地や岩場での戦いこそがアカシたちの本分だ。
だが今は、集落を脅かす何ものかを見つけ、もしもそれが集団であるなら、それらが棲まう地を見つけ出す必要があった。
しばらく進んだところで、一頭が声をかけた。
「大頭」
先頭の小頭が触手で指し示す。見てみると、海藻が、確かに刈り取られた跡がある。刈り取られた場所は細く道のようになっており、東へと伸びている。
合図を送り、武器を構えさせた。
速度を落とし、細道を進む。道は思ったよりも長く伸びている。もしも何ものかとの争いになれば、この場所ではマ族の強みである速さや小回りの鋭さ、隠密性を活かせない。
一度引き返す方が得策か、とアカシが考えはじめたときだった。前方が何やら騒がしい。
散開、と短く告げる。細い道でできうる限りに部隊を広げ、近づいてくる音に備えた。
前方の森が破れた。
森の中に波と泡がたち広がる。その向こう側から、叫びをあげつつ巨体が走ってくる。堅く、平べったい甲殻。太く強靭な六本の足。そして一対の鋭いはさみ。
それらが見えるだけで三頭。慌てたそぶりで海藻を押し倒し、こちらへと向かってくる。
それはマ族と長らく敵対する、タラバ族の一団であった。




