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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第五十八話 会談

 戦士に案内されて、カルパッチョたちは集落の中央にある壺まで移動した。

 マ族やミズ族の集落に比べて、ワモン族の集落は簡素だ。それはほとんど、広場を取り巻くようにして壺が並んでいる、というだけに等しい。集落の周囲には岩壁も柵も築かれず、一見、無防備な印象を受ける。

 それは、ワモン族自体が絶大な探知能力を有していることと共に、この集落の近辺に、タラバ族のような強力な種族がいないということでもある。

 そして彼らは今でも、必要最低限の道具しか用いないのだ。

 アヒージョも集落の様子を興味深げに見ていた。彼女にとっては、どれもが初めて目にする景色だろう。

 戦士に続いて、壺の中に入った。

 二頭の、身体がやや大きめなワモン族が座っていた。一頭は老頭で、もう一頭は若い。カルパッチョは両方に見覚えがあった。族長と、その壺息子だ。

向かい合って座り、胴を下げる。アヒージョもそれに倣った。

「カルパッチョか。久しいな」

「ご無沙汰しております」

 以前より枯れて細った声色に聞こえる族長の声に、衰えを感じた。もちろん体表には出さない。

「まさかお前が、マ族の使者として訪れるとはな」

「見知ったものがいた方がいいと思って。正式な使者は、こちらのアヒージョです」

 建前上は、そういうことになっている。

「マ族のアヒージョです。このたびはお会いくださり、誠にかたじけなく存じます」

 族長が頷いて挨拶を受けた。

「で、話は、以前に攻めてきたという新たな種族の話かな」

「たこにも」

 アヒージョは胴を上げると、朗々とした声でこれまでの顛末を語りはじめた。その間、カルパッチョは族長の顔色を窺う。大群が攻め込んでくる可能性がある、というくだりでようやく表情を少し動かしたが、それ以外は何も読みとれない。

「それで、要望は何だ」

 聞き終えた族長が告げた。

「我々マ族との同盟を。あの種族が侵攻をはじめたならば、我々マ族とミズ族だけでは、到底止められませぬ。ぜひ、力をお貸し願いたい」

 そしてもう一度、胴を下げた。

 ふむ、と族長が声を漏らす。そうしてしばらく思案するようなふうを見せたあと、言った。

「悪いが、協力はできんなあ」


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