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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第五十一話 誤算

 もう一つ、アカシたちにとって困ったことがあった。

 死骸がすべて、持ち去られていた。

 マ族のものも、長き殻どものものも、すべてだ。折れた脚やもげた触手こそ転がっていたが、身体そのものは一つ残らず、敵の軍勢が回収していった。

 マ族たちにとって、大きな誤算だった。

 マ族にせよタラバ族にせよ、戦というのは狩りの延長線上にある。つまるところは、獲物を獲るために攻め、獲物にされないために守るのだ。戦で出た死者はすべて、貴重な食糧だった。

 戦で死んだときに限り、マ族も同朋を食べる。死んだ戦士に、戦士のための舞を捧げ、その後に生き残った者たちでその肉体を分け合うのだ。そうすることで、死んだ戦士たちの力の一部が、食べた戦士たちの中に宿る。そのように、考えられている。

 タラバ族は同朋を食べない。彼らにとって獲物は自らで狩るものだからだ。死者は水と砂に還す。それが彼らの弔いだ。

 だから長き殻どももそうなのだろう、と、勝手に思い込んでいた。

 だが彼らはすべてを持ち去っていった。つまりは、マ族の側は獲物を一切手に入れられなかったということだ。

 唯一残っていたのは、壁の上で死んだ戦士の身体だけ。それだけだった。

「こいつはまずいですな」

「落ちた脚や触手を拾い集めさせよう。少しは、ましだろう」

 集落に多少の食糧は溜め込んである。だが自由に漁に出られない今、うねりを経るごとに厳しい状況になるのは明らかだ。

 困ったことになった。そう思った。

 戦士たちに指示を出しながら、戦場跡を歩く。積み上げた岩壁の一部が破壊されているのを見つけた。崩せるかどうか、敵が試みたのかもしれなかった。

「ここでもう一度、食い止められると思うか」

 タコワサとウスヅクリに問う。

「やれと言われるなら、やりますぞ」

 ウスヅクリは笑みを浮かべて言ったが、タコワサはかぶりを振った。

「大事なのは、敵の速度を落とすことでしょう。残った銛の投射だけでは、難しいかと」

 アカシは頷いた。やはり、同じ触手で防衛することは難しい。そもそも、敵が同じ攻め方をしてくるとは思えないのだ。

 どうするべきか。答えは、なかなか出なかった。

「……やつらはもう一度、攻めてくると思うか」

 その答えはわかっている。だが聞いてみた。

 今度は二頭とも、頷きを返した。


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