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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第四十七話 激突

 大クロトラどもの進撃は止まらない。だがその速度は、はっきりと落ちている。アカシは小頭たちに見えるよう、高く赤珊瑚の大槍を掲げた。

「構えよ」

 ウスヅクリのしゃがれた声がとどろく。前列の戦士たちが、盾をあわせ、押し出す。その上に、後列の戦士たちが長槍の穂先を突き出した。

 密集形態からの刺突。これで敵の突撃を食い止める腹積もりだった。

 水煙が高く、近付いてくる。マ族の倍ほどの巨体が無数の脚を動かし、迫ってくる。飛び出した二つの眼は、怒りの色に染まっている。

 群れの後ろ。幾頭かの大クロトラが、群れから脱落している。そのうちの一頭は頭部に銛の直撃を受け、半ば潰れている。その戦果が、彼らを怒らせていた。

 怒りに任せた軍勢が、突っ込んでくる。マ族の部隊の左右は高い壁だ。北側から集落に通じる大きな道は二つしかなく、もう一つは西側をぐるりと迂回せねばならない。別働隊がいないのは、高所を取ったマ族側には完全に把握できていた。

 軍勢の後ろが分かれた。大クロトラより一回り小さく、黒い縞をもった姿。クロトラ族が、参開しつつ大クロトラに続く。銛の直撃を嫌って、密度を薄めたのだ。

 大クロトラの突進で穴を開け、その後を機敏なクロトラがかき回す、そういう目論見だと、アカシは判じた。

 ならば、穴を開けさせぬまで。

 戦士の幾頭かは震えている。だが、槍を下げる者は一頭たりともいなかった。

 軍勢が迫ってきた。

 第一列の背を、二列目が支える。盾と槍の防御の中に、巨体が突っ込んできた。

 水が震えた。

 砕けた盾が飛び散り、折れた槍が水中を舞う。中央が押され、陣形は崩されていた。

 だが。

 大クロトラの突進は、そこで止まっていた。一列目の盾が。そしてその後ろの支えが、化け物どもの突撃を受け止めたのだ。

「押し返せ」

 声の限りに、叫んだ。

 歪まされた陣形が、徐々に盛り返される。だが、大クロトラたちも黙っていない。あちこちで雄たけびが上がり、タラバの盾に脚が、頭部がぶつけられる。

「突け」

 合図と共に、無事な槍の穂先が突き出された。無防備な頭や腹を見せていた大クロトラの肉体に、鋭い刃が突き込まれる。今度は幾つかの絶叫があがった。

 陣形は戻らない。岩壁の間の大道で、両軍は膠着し、押し合いを続けている。

 大クロトラたちの後方に、新たな水煙が蠢いている。俊敏なクロトラ族の姿が垣間見えた。


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