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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第二幕 備
39/148

第三十九話 旅立ち

 使者が派遣されることになった。

 長老の指示により、三頭の使者が選ばれた。

 言葉の通じぬ棘持つものどもの領域には、舞の上手なミズ族が。

 どこにいるか定かでないケンサキ族の探索には、狩りに慣れたマ族の戦士が。

 そして、ワモン族への使者にはメン族のカルパッチョが。

 カルパッチョと舞上手のミズ族には、戦士が一頭ずつついている。すべて雌の族民だった。

 もしも彼女たちが戻ってくるまでに集落が攻められ、滅ぼされたとしても、彼女たちだけは生き残ることになる。そこまで見越しての選出なのだとアカシは思い当たった。

 もしかすると、カルパッチョはすべてを目論んだ上で、志願したのかもしれないと思った。だが、それでも構わない。生きることへの意地汚さ、嫌らしいほどの計算高さは、彼女の強みだ。

 いざ戦がはじまれば、カルパッチョにできることなど何もない。彼女の戦いは、そういうものではないのだ。

 大頭として、三組の旅路を見送った。部下である戦士たちに、一言ずつ声をかける。

「大頭を、好いておりました」

 ケンサキ族の捜索に向かう雌戦士が、そう返してきた。

 咄嗟に言葉が出ず、そうか、とだけ絞り出した。

「わたくしが戻った際には、これ以上の想いを募らさずに済む決着がついていることを、願っております」

「貴様らは、いらぬことばかりを言う」

 それは、笑って言うことができた。帰還を楽しみにしている。そう付け加えた。

 部下のすべてと、槍の穂先を打ち合わせた。

 雌たちが旅立っていった。その背が波の向こうに消え行くまで、アカシたちは見送っていた。

 カルパッチョとは、最後まで何も、語らなかった。

 声を掛けなかったことが、力になる。そんな気が、なぜだか、していた。

 タコワサを連れて訓練場に戻る。ウスヅクリがカニカマに稽古をつけていた。

 カニカマはタラバ族の甲羅でつくったよろいと、脚からつくった棒を身につけている。はじめにそれをつけろと言われたとき、カニカマは怒り狂い、ウスヅクリにはさみを振り上げた。そしてすぐさま、打ち倒された。

 それで怯むカニカマではない。だが、そのままでは敵わぬことを、ウスヅクリは何度も見せつけた。

 それから、あのふてぶてしいタラバの若者はウスヅクリに、渋々ながら従っている。


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