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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第二幕 備
38/148

第三十八話 種族

「あたしは、いくつもの集落を渡り泳いできました。そうして追い出されるたびに、思ってきた。種族なんて、なければいいのに。集落なんて、なければいいのに、って。ここにあるすべてが同じ種族で、一つの大きな集落だったら、よかった。だったらあたしも、あちこち追いやられることもなかった」

 カルパッチョが胴を下げた。

「多くの種族がひとつにまとまることは、あたしの願いです。そしてこれは、その機会だと思う。どうか。どうか、触手を伸ばしてください」

 カルパッチョはすべての触手をつけ、胴を下げ続けている。その隣で、アカシも倣った。

「長老。俺も、カルパッチョの言うことには頷くべきことがあると思います。今は、他の種族の間で諍いをしている場合ではない。それは確かです」

「胴を上げよ」

 二頭は胴を上げた。長老の表情は、厳しいもののままだ。

「種族の岩壁を取り除くのは容易いことではない」

「承知しております」

「我らは生きるためには食わねばならん。タラバ族でも、ケンサキ族でも、ときにはワモン族であってもだ」

「承知しております」

「それでも今生き残るためには、必要だというのだな」

「はい」

 アカシとカルパッチョの声が重なった。

「わかった。同盟の使者を送ろう」

 できることは、すべてやらねばなるまい。そう呟いて、長老は立ち上がった。

「カルパッチョよ」

 長老がメン族の娘を睨んだ。

「お前には、ワモン族への使者を引き受けてもらう。できるな」

「もとより、そのつもりで来ました」

 長老が頷いた。

「カルパッチョよ。我らすべての種族は、食い合う定めだ。この環は、そのようにできている。だが、それに抗うというのなら」

 触手を大きくひるがえした。

「足掻いてみせるがよい。その先に何があるのか。私も見てみたいものだ」

 長老が壺を出てゆく。使者を送る手はずを整えるのだろう。

 その後ろ姿に、二頭は改めて胴を下げた。


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