第三十五話 提案
壷の外に出てみると、そこにいたのはカルパッチョだった。
「カルパッチョか。どうした」
尋ねると、体をくねらせ、何やら言い難そうにしている。少々苛ついたが、黙って待った。
「あのさ」
ようやく口を開く。
「さっきは、守ってくれて、ありがとう。それでさ。あたし、戦ってる相手ってはじめて見たんだよね」
アカシたち探索に赴いた戦士以外は皆そうだろう、と思ったが、何も言わずに続きを促した。
「それでさ。実際戦ってるの見て、思ったんだ。今のままじゃ、負けるんじゃないかって」
アカシは否定しなかった。
「どうしてそう思った」
「だって、あいつら強いじゃない。それに、どれくらい数がいるか、わからないんでしょ。もしもタラバより多かったら、どうなるのさ」
「戦う相手が手強いのは、いつものことだ。方法は、色々考えている」
「それでもだよ。もっと多くの者が、協力しないといけないんじゃないの。そうでないと、勝てないんじゃないの」
「何が言いたい」
カルパッチョを見下ろす。小さな身体が震えている。威嚇したつもりはなかったが、半分ほどの大きさしかない彼女にはそう聞こえたかもしれなかった。
「他の種族にも、協力を仰ぐべきだ。あたしは、そう思う」
それでもカルッパッチョは、確かにそう言い切った。
「他の種族というのは」
「同じ八本脚のワモン族。それから、できたら南の砂丘のケンサキ族にも」
アカシは唸った。
ワモン族はマ族やミズ族と同じ八本脚の同朋だ。同朋の中では身体が大きく、力の強い者も多い。だが不器用で武具を用いるのは得手でなく、貧しい環に対応できずに、その族民は数を減らしていると聞いている。少し離れた東の土地に集落を構えており、行き来はほとんどない。
そして、ケンサキ族はもっと微妙な間柄だった。




