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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第二幕 備
33/148

第三十三話 小頭たち

「大頭は雌に弱いですからなぁ」

 しみじみと言ったのは、小頭の中でもお調子者のアマズガケだ。

 訓練の合間の休憩のときだ。小頭たちが円座をつくって休んでいる。その輪の中にアカシもいた。

 アマズガケを睨みつけるが、そのようなことで怯む雄ではない。タコワサも、小頭たちの中で厳然たる発言力を持つウスヅクリも、アカシの方を見て笑みを浮かべている。アカシは溜め息を一つ吐き出して、弁解を諦めた。

「これからは俺が守ってやる、くらいのことは言ってやればよいのです。そうすれば、重荷は下ろせましょうぞ」

 ウスヅクリがいとも簡単そうに言い放つ。それができていれば、アカシもこのうねりまで苦労はしていないはずだ。

「そんなことを言えば、あいつは怒り狂って俺を殴るだろう」

「殴られてやればよいのです。それで前へ進めることとてありましょう」

 巡りの功か、ウスヅクリの言葉には含蓄があるようにも思えて、アカシは触手を組んで唸った。

「それで、何とかなるのか」

「さて、最後は互いの問題ですからなぁ」

「他頭事だな、貴様ら」

「実際、他頭事ですからな」

 歴戦のつわものたちは飄々としている。小頭の半分以上はアカシより先生まれだ。こうした経験の差では、どうしたところでかなわない。

「それよりメン族の、ほれ。あの小さな娘とはしっかり吸盤を切っておくのですぞ。年頃の娘は、嫉妬深いですからな」

「いや、雌というのは年に関係なく嫉妬深いものですぞ、ご老」

「確かに、俺の妻も、いまだに俺が雌と触手を絡ませるのを許しませんからな」

「そりゃお前が悪い。そういうのは、誰も見ていない岩場を見つけてするものだ」

「おいらはやっぱり、色んな雌を渡り泳ぐ方がいいなあ」

「雌どもに銛を持って追い掛け回されたこと、もう忘れたのかアマズガケ」

 カルパッチョとはそういう関係ではない、というアカシの言葉は、あちらこちらへと飛んだ話題にかき消された。アカシはまた一つ、盛大に溜め息をついた。

 わかっている。こんな言い方ではあるが、小頭たちはアカシを心配してくれているのだ。気を遣ってくれているのだ。

 彼らがいるからこそ、自分が大頭などをやっていられる。アカシはそれに、応えねばならなかった。


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