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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第二幕 備
30/148

第三十話 アカシとマリネ

 アカシは広場を離れると、その触脚を訓練場に運んだ。

 幾頭かの戦士たちと挨拶を交わしながら巡視し、目当ての一頭を見つけた。

「マリネ」

 別の戦士と槍を合わせていたマリネを呼ぶ。いつもどおりのきびきびした動きで、すぐにやって来た。

「私に何か用か」

 どうやら機嫌はあまりよろしくないようだ。

「何を怒っている」

「聞いた。またあのメン族の雌と、東の浜へ行ったそうだな。しかも一頭で、あの化け物と戦ったとか」

「そうだ」

「前から言ってるだろう。あのメン族とは関わるな。あれの言葉は、私たちを惑わす」

「俺たちとは、違う生を送って来たのだ。ものの見え方、考え方も、俺たちとは違うだろう」

「あれが自分で持っているだけなら、それはいい。だがアカシ、お前に色々吹き込もうとするのは、許せない」

「俺は迷惑していない」

「お前は気付いていないのだ! だから、あれに毒されていることもわかっていない!」

 マリネが槍を突き出し、激昂する。

「だから! あれを守って、そういう危ういことを、してしまうのだ!」

 カルパッチョがいたからこそ、アカシが逃げずにクロトラ族と戦ったことに、マリネは気付いているらしい。すさまじい勘働きだった。

「だが、討ち取ることができた」

「運がよかっただけだ! 無理をせず、仕留められる状況をつくってから獲物を仕留める! お前がいつも、私たちに言っていることだろう!」

 マリネの言葉は正しい。己の行いが無謀であったことは、アカシ自身が一番よくわかっていた。

「すまない」

 素直に胴を下げた。マリネの怒りがどこから出ているか、わかっていたからだ。

 マリネにとってアカシは、今でも守るべき弟分なのだ。

 マリネが槍を下ろした。

「お前は、いつも私を、心配させる」

「俺は大頭だぞ、マリネ」

「それでもだ」

 マリネの顔が憂いを帯びる。だが、これでおしまいではないのだ。

 アカシは触手の一本を開き、彼女の方へ差し出した。


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