表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第二幕 備
26/148

第二十六話 発見

「ところで、いいかげん離れろ。そして、皆のところへ帰れ」

「何でさ。いいじゃない」

 話している間に、アカシは随分遠くまでやって来ていた。ひと続きの砂浜なので明確な区分はないが、すでに集落の外と認識されている領域だ。

「これ以上は危険だ。戻れ、カルパッチョ」

「そういうアカシは、何でこんなところまで来てるのさ」

「確認のためだ」

 アカシはカルパッチョを無理矢理引き剥がした。カルパッチョがぶつぶつと文句を言う。アカシは無視した。

 辺りを見回す。怪しいものは見当たらない。

「こんなところに、いったい何があるのさ」

「何もなければ、それに越したことはない」

 しゃがみ込み、地面に触手を当てる。感覚を、最大限に研ぎ澄ます。

 そのまま動かなくなったアカシを、カルパッチョがつまらなそうに眺めている。

 どれくらいの間、そうしていただろうか。

 顔を上げる。北東。何かが蠢く気配を感じた。

 槍を構える。

「カルパッチョ。戻れ。早く」

「え。いったい何」

 砂が巻き上がった。

 甲殻。はさみ。細長い身体。

 海藻の森で遭遇したのと、同じ姿だ。ただ、あの時出会った個体よりは小さく、黒っぽい縞の甲羅を持っている。

 砂煙の向こうから一番手前のはさみを伸ばし、掴みかかろうとしている。だが、アカシはそれを読んでいた。

 槍の柄で弾き上げる。開いた腹を、石突で叩いた。

 化け物が下がる。身体全体を使い、弾かれたように水中を跳ぶ。凄まじい後退速度だ。

 アカシは素早く周囲を観察した。

 一頭だけ。他にはいない。

 確証があったわけではないが、単独ではないか。ここに来る前から、そう判じていた。

 そうでなければ。これまでの期間に、もっと族民の犠牲が出ているはずだからだ。

 初めて、相手をつぶさに観察する。やはり、森で戦ったものとは相違がある。速さはあるが、あれほどの突進力は感じない。

 こやつらにもいくつかの種があるのか。そして、この相手ならば。

 己一頭で何とかできるやもしれん。四本の触手で、槍を構えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ