表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第一幕 会
17/148

第十七話 宣戦

 マリネとアカシの二つ舞は続く。

 広場に集まったすべての族民が、熱のこもった瞳で二頭の舞を見ていた。

 勇士タコヤキの舞は有名なものだ。見ているほとんどすべての族民は、その筋を知っている。だが大事なのは、それが何を伝え、何を遺しているかということだ。

 多くの者が思い出しただろう。なぜ己たちが、今この場に集落を構えているのか。なぜ暴虐なタラバ族に抗してまで、集落を守っているのか。

 そして、なぜ生まれてくる幼子らの半数が、飢えて死にゆくのか。

 マリネめがけて槍を突き出す。マリネはそれを、胴体でやわらかく受け止めた。

 タコヤキの最期を演じて、マリネは舞を終えた。いつの間にやら、辺りは静寂に包まれていた。

 互いに槍を立て、長老に向き直る。そうして、言葉を待った。

「戦おう」

 低い、だが確かな声で、長老が言った。場は沈黙している。だが波のように。波紋のように。その言葉が広がっていくのを、アカシは体表で感じ取っていた。

「戦おう」

「戦おう」

「戦おう」

 波はうねり、返し、高く、強くなり。広場の隅々まで、広がっていく。銛が掲げられる。槍が打ち鳴らされる。

 皆がわかっていた。ここよりもう、後退できる場所はない。戦わなければ、滅びるだけだ。

「戦おう」

 アカシの口からも、言葉が漏れていた。そうだ。戦うのだ。集落を、守るのだ。

 そのために俺は、戦士となったのではないのか。

「戦おう」

 マリネも体表を赤く染め、声を上げていた。鍛え上げた戦士であるはずのマリネのそんな姿を、綺麗だ、とアカシは初めて思った。

 槍を持ち直し、広場を離れる。喧騒が、背中を襲っている。

 遠景に目をやる。遠くに白い珊瑚山が見える。あの向こう側に、やつらはいるはずだ。

 何ものかはわからない。だが。

 容易く食えると思うな。まだ見ぬ軍勢に向かって、アカシは槍を突きつけた。


(第一幕 完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ