第十三話 捕虜
三頭の若タラバたちを引き連れて、アカシたちは帰還した。
一頭として欠けた様子のない軍勢と、何とタラバ族の捕虜を連れて帰ったという事実に、迎えに出たマ族たちは沸き立った。
出迎える族民たちとタラバをタコワサに任せて、長老のもとへ向かう。動かす触脚が、自然と急いだ。
「アカシ、帰ったのか」
早い帰還に長老は少々驚いていたようだった。構わず帰還の報告をし、話をはじめる。
森が広がっていることと共に、帰り道、タラバたちより聞き出した顛末をでき得る限りそのままに伝える。そして、ミズ族の集落に現れたものと思しき化け物と遭遇し、一戦交えたことも語った。
話すうちに、長老の驚きは増していった。
「よく、無事で帰った」
疲れた声色で、長老が言ったのはそれだった。
「今回の遭遇は偶発的でした。運がよかった。真正面から戦えば、負けるでしょう」
「タラバ族同様に手強いか」
「それ以上にです」
槍を合わせたのは一瞬。だが、それだけでもわかっていた。やつらはマ族では対抗できない、強大な力を持っている。
「……やつらについて、知らねばならない。もっと多くのことをだ」
「集落から逃げてきたタラバ族を捕まえてあります。話が聞けるでしょう」
長老が頷き、二頭並んで壺を出た。捕虜を連れたタコワサが向かってくるのが見えた。
三頭のうち、二頭のタラバはおびえ、脚を縮こまらせている。だが、アカシと戦った一頭だけは、頭をそらせ、前を向いていた。
この者は喋らないだろう、とアカシは思った。この傲岸さがタラバの本質だ。だが後ろの二頭からは、聞き出せるだろう。若いタラバであったのが、幸いだった。
「さて、はじめようか」
拘束されたタラバたちの前に、長老が触手を下ろす。苛烈な聞き取りがはじまった。




