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第百十六話 集会

 手近にいる族民に聞いて、長老たちが集まっている壺へと向かった。集落の奥、岩場の入り組んだ、柔らかきもの以外には入り込みにくい場所に、壺を並べた住居がつくってある。マ族よりも器用なミズ族がつくったそれは、マ族の集落よりも整然と並び、縦横の幅を縮めている。それは防備よりも、隠遁に重きを置いたものだ。

 八つの壺が丸く並べてある一角で、見知った体表が集まっていた。

 マ族の長老と、老頭たち。ワモン族の若長、ツクダニ。マリネ。ミズ族の長老連とゴマミソアエ。ケンサキ族のシオカラ。

 隅の方にカルパッチョがいるのも見つけた。こういう場に彼女がいるのは珍しい。

「戻ったか、アカシ」

 アカシの姿に気付いた長老が声をかけ、アカシは礼を返した。

「オドリグイの姿が見えないようですが」

「舞い続けたせいで、相当に疲労している。ナムルが介抱しているが、命が残るかどうかはわからぬ」

 アカシは目を閉じた。あえて戦場に立ち、戦士たちを鼓舞したオドリグイ。彼女もまさに、戦っていたのだと思った。

「お主らがあの巨大な化け物に立ち向かったと聞いてな。いつ戻るかわからなかったゆえ、先に話をはじめていた。まあ、座れ」

「カニカマは無事ですが、ゾウスイ殿が喰われました」

「聞いている。あれほどの戦士がたこも容易くとはな。恐ろしいものだ」

 長老が胴を振った。マリネの隣が空いていたので、アカシはそこに触脚を下ろす。

「それで、どうなりましたか」

 ぐるりと並んだ体表を一眺めして、聞いた。うむ、と長老が苦々しく頷く。

「この集落は放棄し、南へと逃げのびる。そのことは、皆が了解した」

 マ族の老頭たちが長老たちにあわせて頷くが、ゴマミソアエを含むミズ族たちは渋い体表をしている。己たちのつくりあげたものを大事にするミズ族だ。それらを捨てることに対して、未練があるのだろう。

 だが、間もなくこのミズ族の集落へも、やつらは攻め寄せて来る。それは疑いなかった。ここに留まるということは、死ぬということだ。

 ちら、とツクダニの方を見る。触手を組んで黙りこんでいたツクダニであったが、アカシの視線に気がついたのか、視線を上げて口を開いた。

「ワモン族の集落で受け入れるのは、構わぬ。多くの者が反対するだろうが、これははじめよりの盟約だ。だが」

 ツクダニはじろり、とアカシの方を見る。と思ったのだが、視線がやや、ずれている。振り返ると、そこに隠れるようにしてカルパッチョがいた。

 ツクダニの睨みを受けたカルパッチョは、ただでさえ小さい身体をさらに縮こまらせた。

「知ってのとおり、我々の集落は貧しい。マ族とミズ族を受け入れたところで、すべての族民が生きてゆくことはできぬだろう。それを、どう考える」


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