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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第一幕 会
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第十一話 壺と砂

 拠点まで引き上げ、撤収の準備をはじめた。

 眼下に見える森は静かだ。あれだけの巨体を持つ化け物どもがどこへ消えたのか、その集落すら遠目には見つけることができない。

 だが思い当ることはある。それは、彼らが間違いなく、タラバ族と同じく殻をもつ者たちである、ということだ。

 タラバたち殻持ちどもとマ族たち八本足の者どもは、その生き方がまったくといっていいほど違う。一番の違いは、八本足の族民たちは皆、壺をつくり、道具を使うことだ。

 殻持ちたちは総じて、生まれ出たときより堅牢な甲殻と、強大な武器であるはさみを持っている。だが、八本足の者はそうではない。

 代わりに持っているのが、しなやかに動く身体と、器用に動く八本の脚だ。その特徴を活かして、八本足の者たちは周囲にあるものを様々な工夫を凝らして使うことを覚えた。

 その最たるものが、壺だ。柔らかな体表を持つ八本足は、傷つきやすい。だから、岩や珊瑚に囲まれた穴ぐらをすみかとすることが多かった。

 数が少ないときはいい。だが、族民の数が増えてくると、穴ぐらの数が足りなくなり、穴を巡っての争いがはじまる。

 そこで考えられたのが、今集落に並んでいる大小の壺の数々だ。

 壺は大貝の殻や、岩や珊瑚をくりぬいてつくったものが用いられている。周囲にあるもので、穴ぐら自体をつくり出そうと試みた。そうしてつくられたものを、アカシたちは壺と呼んでいる。

 壺がつくられはじめて、八本足たちはすみかの不足に悩まされることがなくなった。それと同時に、定住する、という生き方をも知ったのだ。

 だがタラバ族たちはそうではない。彼らも群れはつくるが、群れの位置は豊富な狩り場を求めて移動する。そして彼らは、大抵、砂の中や岩の下で眠るのだ。

 あの化け物どもの生態はタラバ族に近いのではないか、とアカシは思った。スミソアエが捕えられたときも、やつらは砂の中にいた。砂中に潜むのが得意であることは確かだろう。そうであれば、彼らには広い砂地が必要なはずだ。

 それでマ・リネリスの渓谷なのか、と合点がいく。渓谷の両岸には岩場と砂地が広がっている。

 定住するという意識を持たないタラバ族が長い間住みついていたのが、マ・リネリスの両岸だ。そこは、豊かな土地であった。誰もが欲しがる土地であった。


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