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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第百七話 光明

 雌の戦士たちとタコワサの配下の戦士、そしてワモン族の戦士たちが、残る長き殻どもたちに攻勢をかける。

 長き殻どもの体力は凄まじい。ここまでの長駆、そして休まずの戦いにも関わらず、その勢いに衰えは見えない。

 多少優勢になったとて、気を抜くものなど、戦士たちの中にはいない。

 タコワサは隊より離れて、クロトラ族の死骸へと泳ぎ近づく。素早く、回収できるだけの銛を背に括りつけた。

 前進しながら触手に持つ銛を放つ。頭を狙ったつもりのそれは、胴に当たった。アヒージョに食らいつこうとしていたそれは、水中で体勢を崩す。そこへアヒージョは鋭く槍を抉り込んだ。

 触手が欠けて、狙いがつけにくくなっている。身体の重みが変わったのだ。タコワサの正確無比な技前は、失われたといってよい。

 だがそれでも。投げ銛の技こそが、タコワサの存在意義であり、矜持でもある。

 重みの偏りを思い出す。銛を一本抜き出し、投げた。それは泳ぎゆく一頭の、頭部と胴の継ぎ目に突き立った。

 もう一本を抜き、マリネの方へ向かう一頭へ投げた。

 今度は過たず、素早く泳ぐ一頭の頭部を、左から右へ貫き仕留めた。

「触手を失い乱れるようで、何が名手か」

 タコワサに気付いた一頭が、顎を開き襲いかかってきた。

 一本を抜き、水中に浮かべる。シオカラがつくった、五本刃の銛だ。

 六本になった触手を大きく捻る。

 後端を打った。八本の触手に違わぬ勢いでそれは飛び、化け物の口中を刺し貫いた。

 戦場を見渡す。クロトラ族は、逃げにかかっている。それをマリネとアヒージョが、容赦なく追撃していた。

「決したようですな」

 戦士の一頭が、タコワサに寄って来た。

「地形を知られたくない。すべて仕留めるのだ。肉は集落に。これだけあれば、五うねりは籠れるだろう」

「たこにも」

 戦士の後を追って、タコワサも追撃に加わった。勢いを失ったクロトラ族は存外に脆い。タラバ族よりも手強いと思われていたこの種族だが、守りに入ることは得手ではないのだ、とタコワサは感じた。

 一気呵成に攻め寄せる。そういうことが、できていた種族なのだろう。

 それを今、一部であるとはいえ、柔らかきものが弾き返した。一時であれ、守勢に回らせた。

 光明。水の薄き場所から、時折、まばらに差すもの。クロトラ族の死骸転がる戦場に今、それが差していた。


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