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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第百五話 奮戦

 新たに二頭のクロトラ族が、戦士たちに顎を向ける。

 戦士たちは銛を握り、三頭で固まる。その一隊を挟み込むように、クロトラ族が動いた。

 銛を突き出す。だが、その程度でひと回り大きな長き殻どもは止まらない。

 一頭を多数の脚で抱え込む。それから、胴に齧りついた。もう一頭も戦士を捉え、脚を振り回している。

 瞬く間に、一隊が喰われた。

 タコワサは素早く泳ぎ離れ、仕留めたクロトラ族の死骸に近づく。その頭部から銛を引き抜き、投擲した。

 銛は背に当たり、滑ってゆく。傷は残したが、致命傷ではない。

 その隙に、ワモン族と残りの一隊は、クロトラ族の群れから離れ、岩壁に張り付いた。

「銛はあと何本ある」

 合流したタコワサが問う。二本、一本、という声が返ってきた。

「一本を残して、すべて放て。その後に、突貫する」

 クロトラ族が群れを崩さず岩壁を登って来る。その速度は鈍い。こちらへ引きつけたぶんだけ、集落の危機は去るだろう。

 幸いにも、敵はこちらをすべて食べてから、先へ進むことに決めたようだ。

 ならばこちらも、一頭でも多く狩るのみ。

「放て」

 銛が投射される。僅かであるが列を崩し、何頭かが壁を離れて落ちてゆく。

「突撃」

 叫びを上げながら、戦士たちが降下する。登り来るクロトラ族の頭部に銛を突き立てる。タコワサも一頭の目を狙い、銛を突き込んだ。

 大した傷は与えられない。投げて使える銛はない。小さな傷を少しずつつけ、消耗させて殺すしかない。

 だが敵は、ただひと咬みでマ族を喰い殺せるのだ。

 戦士たちとワモン族は見事な連携で、小さな傷を与えてゆく。だが、クロトラ族は怯まない。

 顎が咬み鳴らされる。ワモン族とマ族の一頭ずつが、触手の数本を持ってゆかれた。

 銛を振り、捕まった二頭を援護する。その横手に、クロトラ族の顎が伸びてきた。

 触手を掴まれる感触。咄嗟に、切り離した。

 クロトラ族の顎が、やや斑の多い白っぽい触手を二本、くわえている。その開いた隙間に、全力で銛をねじ込んだ。

「触手でよいなら、くれてやる」

 手近なクロトラ族の背から、強引に銛の一本を引き抜いた。触手は六本になった。だが、まだ戦えぬわけではない。

「ただで喰われてやると思うなよ、化け物ども」

 タコワサは吠えた。


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