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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第百四話 射手

 僅かに砂煙を上げつつ、クロトラ族が迫って来る。獲物に喰いかかるときほどの速さではない。あれはあれで、忍んで近づいているつもりのようだ。隠遁には向かぬ種族であるというのが改めてわかる。

 はじめに侵入を果たしたクロトラ族は、相当の上手であったようだ。アカシは騙せなかったようだが。

 群れが、銛の届く距離に入った。

「放て」

 最前列の個体に向けて、銛が投射される。高所から投擲された銛は、勢いを増して飛び、無防備なクロトラ族の群れを襲った。

 前を蠢く二頭の叫びが上がる。そのときにはすでに、戦士たちは岩壁を離れている。

 銛を投射しながら、水中を降下した。

 群れの動きは止まっている。マ族の戦士たちは一方的に、長き殻どもの甲殻に銛を突き立てる。

 三頭のクロトラ族が、顎を向けて水中に躍り出た。

 タコワサは背の海藻を解いた。背負っていた銛が散らばり、水中に踊る。

 柔らかき身体を活かし、限界まで捻る。

 勢いをつけた触手で、落ちゆく銛の後端を叩いた。

 強く押し出された銛が、水を切ってクロトラ族に飛ぶ。五つの刃が合わさった銛先は、一撃でクロトラ族の頭部甲殻を砕き、貫いた。

 一つ。

 次の触手で、隣を落ちる銛を叩く。まっすぐに飛んだ銛は、やはり過たずクロトラ族の顎に飛び込んだ。

 二つ。

 戻る力を使って、身体を逆に捻る。三度目の触手を、叩き出す。

 撃ち出された銛は、残る一頭の頭部をまたもや破砕した。

 三つ。

 落ちてゆく残り一本の銛を、二本の触手で掴んだ。

 状況を認めたクロトラ族が、泳ぎ襲い来る。地に脚がつかぬ水中戦であれば、まだしも分がある。

 三頭一隊。マ族の戦士が素早く固まる。

 ワモン族が飛び出た。

 泳ぎ来る先頭のクロトラ族とすれ違い、散開する。クロトラ族の脚が千切れ、水中を舞う。

 ワモン族の戦士たちの触手には、刃物が握られている。すれ違いざまに、切ったのだ。

 もだえるその一頭に、マ族の戦士たちは触手にした銛を突き刺した。

 戦士たちが離れる。クロトラ族が落ちてゆく。

 だが荒ぶる次の一頭が、戦士たちには迫っていた。


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